世の中には超大盛店と言われる店があります。
常識で考えたら食べきれないほどの大量さを売りにしている飲食店です。一時期は、某メジャーなカレーチェーンさんなんかも、1000数百グラムを一定時間内に食べきったら無料というキャンペーンをやっていました(現在は、無料ではないながらも注文は可能)し、たまに大食い芸能人なんかもいたりしますので、何となく印象に残っている方も多いのではないでしょうか。
ここでは、そんな中でも、超大盛、ドカ盛りの聖地としてその筋の人には名高い「光栄軒」について、熱く語ってみたいと思います。
ドカ盛りの名店 光栄軒とは
超大盛店と一言に言っても、実はほとんどのお店は無料のチャレンジキャンペーンなどはおこなっていません。一部のキャンペーン的な、極端な出し方をしている店が目立つというだけで、実際にはデフォルトの量が多い料理を淡々と地道に提供し続けている店が大半を占めています。
光栄軒もそんな「地道にやっている」超大盛店の一つ。場所は東京の下町、荒川区のど真ん中ですが、どの駅からも結構距離のある位置にあります。
営業時間:11:00~15:00、17:00~22:00 ※土日祝は11:00~20:00
定休日:月曜
いずれの駅を使っても歩くことには変わりないのですが、最寄りとしては都電の荒川区役所駅。それ以外だと東京メトロ町屋駅、三河島駅あたりが比較的近いです。逆に三ノ輪駅まで行くと、歩けなくはないものかなり遠いです。
都内という事を考えるとかなり交通の便は悪い部類に入る店なのですが、それが信じられないほど連日かなりの客入りを誇る人気店です。
有名店ながら、地元密着型の気さくな雰囲気が心地よい
かつてはドカ盛り系のムックなどでも紹介されたことがあることでもわかるように、東京近郊の大食い愛好家の間では定番と言っていい店です。
とはいえ、店の雰囲気は明らかに地域密着型。店構えも中華料理屋によくある赤い看板にのれんと、奇をてらうような特徴はなにもありません。実際に店に行くとわかりますが、この店では大食い好きは割合的には決して多くなく、客層はむしろ地元民や近くで働いていると思しき人たちが大半を占めています。
もっとも、店の雰囲気が気さくなので、いきなり行っても入りにくいということはまったくありません。外交的な雰囲気ですし、きっぷのいい店主・浅見寛氏と奥さん、そしてお手伝いの方によるさっぱりした接客は初見でも気持ちいい。威勢のいい中華鍋の振りっぷりも含め、いかにも街の中華やさんといった風情で、居心地はかなりいいです。
ちなみに、当時のインタビューによれば、子供のころ腹を空かせていることが多かったから、とにかくたっぷり食わせてやりたいんだよ!とのこと。なかなか最近では見かけなくなったストイックさですが、こういうのってなんかいいですよね。
光栄軒の超有名メニュー「チャーハン超大盛」
光栄軒をドカ盛り店たらしめている最も有名なメニュー、それは間違いなく「チャーハン超大盛」でしょう。メニュー表には大盛りまでしかなく、言ってみれば裏メニューのひとつなのですが、頼めば何の問題もなく出てきます。
5合の米が惜しげなく使われた驚異のチャーハンは味も抜群
光栄軒ではチャーハンは普通盛りでも他のメニューに比べて相当に量の多さが際立っており、2.5合の米が惜しげもなく使われます。では、超大盛だとどうなるのかというと、5合。あり得ませんが、この量が、なんのてらいもなく提供されます。
お値段は税込みで1020円とこのお店にしてはかなり高めですが、作っているのを見た時点で、この値段でも安いと思わざるを得ません。明らかにもう食事の範囲を逸脱した、凄まじい量なのです。いざ目の前にドン!と置かれると、ますます絶句。常識を覆す量と言わざるを得ません。
味の方は、うまい。もちろん最近よくあるこじゃれたお店のもののようなお洒落さはありませんが、昔ながらの「焼きめし」と呼んだ方がしっくりくる、懐かしい味わいが楽しめます。肉などの具もかなりしっかり入っていますし、料理としてのクオリティは文句なしです。
絶対に無理は厳禁!の常軌を逸した量
もっとも、いくら味がうまくても、この量のインパクトには負けます。
ハッキリ言って、ドカ盛り好きでも躊躇するような量だけに、最初から自分の胃袋の容量を考えた上で、自信がある場合のみ頼むべきです。手間的にも材料的にもお店の負荷はおそらく相当大きいと思われるので、くれぐれも冗談半分で注文するようなことはやめましょう。
ただ、いざ食べ始めてから無理だと思ったら、いうまでもないですが、絶対に無理はしないこと。持ち帰り用のパッキンも用意してくれますから、無理なら無理で素直にギブアップすべきです。
光栄軒の魅力はむしろ「超大盛」以外にあり
ただ、思うに光栄軒の本当の魅力は、この超大盛チャーハン以外のところにあります。
超大盛でなくても、好きなだけ食う快感が格安で味わえる
先にも書きましたが、このお店、普通盛りであろうがどのメニューであろうが、相当な量です。チャーハンが特に量が際立っているというだけで、どのメニューを頼んでも腹いっぱいになるのは確実です。それでいて、値段もボリュームを考えると破格。ほとんどの定食系が600円以内で食えるといえば、その気前のよさっぷりは伝わってくるのではないでしょうか。
大食いの人は「量を気にせず好きなだけかっこむ」ことに喜びを見出すことがほとんどですが、その点でいえばこのお店は別に超大盛にしなくても間違いなく合格です。むしろ、無理なく気負いなく食べられるという点では、普通盛り、多くても大盛りくらいにしておいた方がちょうどいい。
家庭料理的なうまさと惜しみなく使われた具の数々
味付けはどの料理にしても庶民的。いわゆるグルメ的なお店ではありませんが、その代わり家庭料理的な、素朴な気どりのないうまさを楽しめます。
そして、特筆すべきは具の惜しみなさ。こういう大盛店だと具は意外にケチることも少なくありませんが、光栄軒に限ってそれはまったくありません。原価計算どうなっているんだろうとこっちが心配になるほどの大量の具が使われています。
特に、レバニラ炒めのレバー肉の使いっぷりはすごい。また、定食系はほぼ全部のメニューを通じて野菜が大量にぶち込まれているので、普段野菜不足なら感涙ものと言えるでしょう。
裏メニュー多数。調べてから行くとより楽しい
ちなみに、付け加えておくと、メニュー表にはない裏メニューが無数にあることも特徴。私的なお気に入り裏メニューとしてはニラ玉。シンプルな味付けがおいしい一品です。常連の方々によって裏メニューの例はネットにたくさん上がっているので、それで目星をつけて出向くのもありです。
歳を食っても長年通える、ドカ盛り系では稀有な名店
光栄軒に初めて行ったのは十年以上前になります。その時は超大盛チャーハンだけが目的でした。チャーハンを一度嫌になるほど食ってみたい、というそれだけで出向いたのを今でも覚えています。
もっとも、これは当時から自覚していたことですが、超大盛レベルの大食いというのは本来身体的には無理があるわけで、何のメリットもありません。ドカ盛りというのは、メリットがどうこういう以前に、単純にイベントなのだと思います。
自分ひとりで行くにせよ仲間内でいくにせよ、ギャグマンガのドンブリ飯のごとくそびえたつ食べ物の山を見て、「おお、すごい!」と感嘆する。
普段のカロリー・健康を気にしながらの食事は一切忘れて、無心にむさぼりつく。
完全にタガが外れた、非日常世界なのです。実際、こういう店では、食前の気分の盛り上がりは半端ではありません。当時のわたしは、それを求めていたわけです。
今となっては胃が小さくなったこともあり、超大盛チャーハンを頼むことは全くなくなりました。ただ、それで足が遠のいたかというと、むしろ逆。最近は以前よりも、通う回数は増えています。
野菜補給的な意味合いもあるのですが、機会があるたびに行きたくなり、実際に通ってしまうあたりにこの店の魅力が現れていると思います。超大盛を抜きにしても、自分の胃袋に合わせた「好きなだけ掻っ込む」を実現できるお店。
一般に超大盛店というのは若者ばかりになってしまう傾向がありますが、光栄軒はその数少ない例外です。一度気に入れば、きっと末永く、自分の中でも定番として付き合えるお店だと思います。