錦川清流線乗車記と路線の現状 清流みはらし駅の観光情報も【2019年加筆】

今回の帰省で山口県のローカル線「錦川清流線」に乗ってきましたので、乗車記を残しておきます。

※2019年加筆:路線の現状や新駅情報、また、その後乗車したとことこトレインの情報などを追加した上で、全面的に加筆修正しました。

清流錦川線の現状

現状、国内でもワーストクラスの赤字線だが…

錦川清流線は元々国鉄の路線で、岩国市の川西駅(JR岩徳線)から分岐し、錦町駅までを大体1時間強かけて走る盲腸線です。実際には、始発駅はJR岩国駅になります。また、JRとは別会社線なので、18きっぷなどのきっぷは使えません。

もともとは山口線(新山口~益田間)の日原駅までつなぐことを想定しており、国鉄時代の路線名は「岩日線」といいました。けれど、いかんせんローカル線、赤字なのはどうしようもなく、国鉄末期には錦町以降の工事は中断され、JR西日本移管直後に第三セクター化され、現在に至っています。

現状でも路線自体の厳しい状況は相変わらずで、平均通過人員は2015年度の時点で326人。これは全国レベルでみてもワースト上位に当たる数字で、まごうことなく存続危機路線の一つといえるでしょう。これは沿線の民家などが錦川の対岸に集まっており、生活動線から外れてしまっていることも要因の一つです。

唯一の救いは母体である錦川鉄道自体の経営状態がさほど悪くないこと。鉄道以外の受託業務などを行っており、そちらに関しては堅調です。とはいえ、鉄道自体もなんとかしなければならないのは自明。最近では観光路線として再起を図っています。

新駅かつ秘境駅・清流みはらし駅

この一環として、2019年には26年ぶりの新駅・清流みはらし駅が開業しました。なぜこれが観光路線化の一環かというと、この新駅、一般的な駅とはかなり意味合いが異なる存在だからです。

どう違うのかというと、この駅は「意図的に作られた秘境駅」なのです。断崖絶壁と錦川にはさまれたわずかなスペースに真新しいホームだけがぽつんと設置されているだけで、周辺に道路などは一切なし。普通の秘境駅はまだ獣道くらいはあることが多いのですが、清流みはらし駅についてはそれすらありません。文字通り、鉄道以外でのアクセスは一切不可能なのです。その証拠に、この駅には出入り口さえありません。仮にあったとしても移動のしようがないのですが。

ではなぜこんな駅を作ったのかというと、この清流みはらし駅、イベント列車専用の「展望専用駅」なのです。普通列車は一切停車しません。

あまりにも思い切った戦略ですが、それだけに話題性は大で、その孤立っぷりには衝撃を受けた方も多かった模様です。

ちなみに肝心のイベント列車ですが、現時点で清流みはらし駅に停車するものは

「清流みはらし列車」(4500円(岩国-錦町間往復+弁当)、現時点で概ね1ヵ月に1回ペースで運行)

「秘境駅ハーフ列車」(1500円(錦町-北河内往復)、現時点で概ね2か月に1回ペースで運行)

の2種類が存在します。乗車機会自体が少ないのはネックですが、それだけによりレア感は高くなっていると言えるでしょう。

 

錦川清流線乗車記 車窓はどんな感じ?

季節によっては桜も楽しめる!のどかな癒し系ローカル線

さて、実際に乗車した感想ですが、一言で言うと「のどか」の一言です。絵に描いたような山間ローカル線の典型。ただ、すぐそばを錦川が流れていることも印象はなかなか涼やかです。

ルート的には錦川の川沿いをゆったり錦町にむけて北上していくのですが、清流というだけあって錦川の水流は極めて綺麗で、周囲の農村や森林との取り合わせが何ともノンビリした気分にさせてくれます。

車窓の印象ですが、一応ビューポイントで徐行してくれるなどのサービスはあるものの、どこか特定の箇所だけが見どころというのではなく、全線に渡って山間と錦川のコントラストを楽しむといった印象が強いです。その意味では、派手さがある路線ではありませんが、だらーんと川のある風景を見ながら癒されたい方にはうってつけです。

ちなみに今回は季節的にみられませんでしたが、この路線、桜が見える駅が多いことでも有名です。見ごろはおおむね4月上旬なので、時期が合うなら行ってみてはいかがでしょうか?

車窓を楽しむための席はどちら側?

ただし、この路線、左右どちらの席を取るかで、車窓の見え具合がまったく変わってしまいます。

錦川の風景を楽しみたい場合は、錦町方面行きの場合、進行方向に向かって右側の席に陣取りましょう。左側の席は川がよく見えない上に、さらに見通しの悪い区間が大半を占めるため、あまりお薦めできません。

席を取る際には早めに座席を確保することをお勧めします。

錦川清流線への乗り継ぎについて

まず、大前提として錦川清流線は本数がかなり少ないです。もっとも、第三セクター路線として見れば極端というほどではないのですが、問題は日中ど真ん中の便が2時間~3時間間隔になってしまうこと。出発地が広島や山口県内というのでなければ、かなり計画は立てづらいでしょう。

実際、今回もかなり計画は立てづらかったです。あらかじめこの路線に乗車することを最優先にして計画を立てることが必要になります。

なお、錦川清流線内には新幹線の「新岩国駅」との乗換駅もありますが、ただでさえ「こだま」しか止まらない上、さらに乗り継ぎもあまり考慮されていないため、かなり待たされることが多いです。新岩国駅での乗換を考えている方は、あらかじめ時刻を確認しておいた方が無難でしょう。むしろ、バスで岩国市街へ出て時間を潰したほうがまだやりやすいかもしれません。

 

錦川清流線の観光には外せない存在、とことこトレイン

岩日北線の遺産を活用した観光資源、とことこトレイン

もう一つ、錦川清流線で観光ネタというと必ず話題に上がるのが「とことこトレイン」です。

国鉄時代に延伸工事が中断された錦町駅以降については、一部の路盤が既に作られていました。それを利用して、錦町駅から雙津峡温泉までの約6キロ間に運行されている観光用トロッコ遊覧車が「とことこトレイン」です。

運行日は、春休み・夏休み期間は毎日、それ以外は11月までの土日祝。冬季は運休となります。

便数は1日4便。錦川清流線を利用する場合に限り事前予約が可能で、車などで錦町まで自力で行く場合は空席がある場合のみ先着順で乗車可能です。

以上を見ただけでも錦川清流線本体以上に乗りづらいのがわかりますが、なにしろ国内でもまれな「未成線跡をまとまった距離体験できる交通機関」。観光用トロッコ遊覧者を謳っていることからもわかるように、これ自体が既に観光資源になっています。それだけに、せっかく錦川に行くならぜひ乗っておきたいものです。

独特の見どころに加えて雙津峡温泉へのアクセス手段としても有効!

実際にのってみると、確かに車がトラムなので鉄道とは違うのですが、走る路盤がもともと鉄道になる予定だった道だけに、思った以上に「鉄道」の感覚が強い。また、途中には蛍光石を使って装飾がほどこされた「きらら夢トンネル」など独自の見どころもあります。

さらに言うと、この「とことこトレイン」、法律的には「岩日北公園内を走る遊具」としての扱いなのですが、距離がそこそこあることもあって、臨時とはいえ雙津峡温泉への交通機関としての機能も果たしています。

雙津峡温泉へのアクセスには、「とことこトレイン」以外だと特定の温泉施設の無料送迎か、運転日が限定されるバス(岩国市生活交通バス、錦町駅にて乗り継ぎ)のいずれかくらいしかないので、錦町駅周辺の観光という意味でも外せない存在なのです。

まとめ

ここまでいろいろと錦川清流線についてまとめてきましたが、多少なりともその魅力を伝えられたでしょうか(今となっては個人的にかなりお気に入り路線なので、伝わってたら嬉しいです)。

第三セクター線の中でも正直地味な印象がぬぐえない錦川清流線ですが、実際に載ってみるとその見どころの多さはなかなかのものです。事前の下調べが必須という点ではハードルが高いですが、機会があればぜひ一度行ってみてくださいね。(K.Y)

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