普段癒されたい癒されたいと思っている私ですが、だからと言って四六時中そういうものばかりおっているわけではありません。
むしろ、趣味的な部分でいえば、私の普段のそれは癒しとは結びつきようもない、真逆のものばかりです。
一つ上げると、ロック。それも、割とうるさめだったりネガティブな奴が中心です。
そもそもロックって、ジャンル自体がそういう感じですしね。
もっとも、意外かもしれませんが、そういうののほうが心に響く瞬間っていうのはあるんですよね。
憂さ晴らしというとちょっと聞こえが悪いですが、そういう感じです。
そういうレベルを超えて本気で落ち込んでるときにはさすがに精神状態が荒みすぎるんで、敢えて避けてますけどね。
そんな私が邦楽で好きなバンドの一つに、PlasticTreeってバンドがいます。
いわゆるヴィジュアル系に属するバンドで、出てきたのが90年代ですから、かなりの重鎮に近いバンドと言っていいでしょう。
このバンド、出てきた当初は、本気で暗い雰囲気の曲ばかりが軒を連ねていて、不協和音もガンガン。
そういう意味で、他のヴィジュアル系ともどこか違う異彩を放っていました。
ヴィジュアル系自体がそもそもネガティブさや奇怪さを売りにしているバンドが多いんですが、このバンドの場合、どちらかというと病んでる感じ。じっとりとした湿度の高い世界観で、文字通り「ドロドロ」という言葉がぴったりでした。
ただ、その病的な世界観は、当時のわたしには何故かしっくりきたんですよね。
それでハマってしまいまして、ずっと聞き続けています。
個人的な事情はさておき、音楽的なことを述べておくと、元々洋楽系の影響が極めて強いバンドで「ザ・キュアー」などのバンドが好きな人ならピンとくるでしょう。
また、それだけに全体的に重低音重視のドスのきいた感じの音作りが多く、普段は邦楽に興味がない洋楽ファンでもおっと思わせるものがあります。
近年になるにつれ、徐々に作風は変わってきており、また、幅がヘヴィロック的な音やテクノ的な曲も目立つようになってきているのが特徴。アルバムによってはシューゲイザー色を前面に押し出したものもあり、普段このバンドを聴かない層にも好評を博しました。
ドロッとしたものが聞きたいなら初期作品、そういうの抜きで音楽性を楽しみたいときは近作ってことになるでしょう。
特に最近でたアルバム『doorAdore』は、後者の到達点です。
このバンドには近作でも珍しいほど押しと勢いが強い曲が並ぶため、いわゆる「ドロドロ」好きには不向きかもしれませんが、そこを割り切れば楽曲の完成度はこのバンドでも随一です。
それでいて、従来のどこか夢うつつな、現実離れした雰囲気も割と色濃く残っているので、全体として他のバンドではなかなか見かけない、独特なバランスになっています。
初聞きなら、好き嫌いはどうあれ、意外な音世界を楽しめることは請あい。
ヴィジュアル系ファンのみならず、ロック全般が好きという人には是非ご一聴いただきたいと思います。