MOS資格の難易度やメリット・デメリットは?合格者が語る実感

PC関係の資格の中でも、おそらくもっともメジャーなものの一つがMOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)でしょう。
民間資格ではあるものの、下手な国家資格など以上に存在感のある資格です。

ただ、身近な資格だけに、評判がかなりバラバラなのも事実。
使えるという声もあれば、履歴書に書くのが恥ずかしいという意見まで様々です。
この記事では、以前実際にMOSを取得した筆者が、その長所と短所、取得後の実感などを記しておきたいと思います。

MOSの概要と受験までの体験談

MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)概要

まず最初に、おさらいとしてMOS試験の概要をまとめておきます。

・科目はWORD/EXCEL/Powerpoint/ACCESS/OUTLOOK。
ただし、まとめて受けるわけではなく、すべて独立した別試験扱い。
WORDとEXCELについてはさらに上位試験であるエキスパートが用意されている。
※2013に限りエキスパートがさらに2試験に分かれており、両方取った時点で認定証発行。
・試験は、会場に用意されたPCで実際にソフトを操作する形式。
各問題ごとに、それにあった操作を実行できれば正解となる。
※筆記試験はありません。
・全国一斉試験が月1~2回ほど実施。その他施設によっては随時試験も行われます。
会場が少ない都道府県もありますが、それでも他の資格に比べればかなり受験しやすい部類。

取得当時の筆者のスペック

取得当時の筆者がどういう状況だったかというと、それまで一応PCは使っていた職種に長くついていました。ただ、特殊なソフトを使う業種だったため、Officeについては人が作ってくれた表にたまに入力を行う程度。触れたことがないというほどではないけれど、実務経験としてはとても言えないレベルでした。

そんな中転職活動することになったので、この際だから一度PCの基本ソフトを一度系統だって学んでおこうかと考えたのがきっかけです。
結果的には、上記のうち、Word、Excelをエキスパートまで取得しました。

講座を受ける必要は?難易度や独学について

まず、試験自体の難易度はさほど高くありません
大まかな基本機能とその操作方法を覚えるという側面が強いため、勉強方法としては暗記主体の勉強スタイルです。
ただ、実際の操作による試験ということもあり、本を読むだけではなく、実際の操作を身体に覚え込ませるのは必須。受験するバージョンのソフトをインストールした上で、参考書についている模擬試験などは何度もやって、問題なくこなせるまでにはしておく必要があります。

内容的に、独学は充分可能。市販の参考書で十分です。ただ、参考書ごとに意外にぬけがあったりするので、余裕があれば複数使うのが無難でしょう。
わたしの場合、富士通エフ・オー・エムの「わかる」シリーズと翔泳社の「オフィスの教科書」シリーズを使いました。
基本、この2種類の演習を完全にこなせるようになっておけば、まず受かる程度のレベルです。

勉強期間はPCに多少なりとも馴染みがある人が集中的にやれば、1科目あたり1ヵ月もあればいいでしょう。隙間時間などでちびちびと進めていく場合は長めに見ておく必要がありますが、それでもさほどの期間は要らないはずです。

ただし、PC操作の時点で躓くレベルの場合は、多少お金がかかっても講座を受けたほうがいいかもしれません。
勿体ないと言えば勿体ないのですが、いちいち操作の時点で引っかかっていたら、速攻で取れるというこの試験のメリットが薄れてしまうためです。

合格したらどうなった?面接・就職後の実感

さて、そんなこんなで取得したMOSですが、就職活動や仕事において変化はあったのかというと、ありました。
ただ、少々注釈が必要です。

MOSは就職活動で評価されるのか?

まず、就職活動時についてですが、資格のウケは決して悪くありません。
実務経験がほぼないに等しかったにも関わらず「でも、なんとかなりそうだね」といった反応。
確かに専門資格というわけではないので、高い評価というほどではないと思いますが、最低限の知識はあるものとみなしてくれる傾向にありました。

そもそも取得までは書類審査ではねられることが多かったですが、少なくとも面接までは進めることが増えたように思います。

応募資格としてMOSを必須にしている求人というのはそう多くありません。
ただ、必須ではないにしても「WORD,EXCELの基本操作ができる方」といった書き方をしている求人は特に事務系では多いので、そうした求人であればかなり違ってくるはずです。
なお、数は少ないですが、特定の機能を使えること(ピボットテーブルや特定の関数など)を指定している求人もあるので、そうした求人を見つけたら、徹底的に復習してから挑むと自信をもってアピールできると思います。

ただ、資格の性質上やむを得ないですが、PCのプロフェッショナル的な会社になればなるほどウケが悪くなっていくのは事実。恐らくですが、よくある「MOSを履歴書に書くのが恥ずかしい」という意見はこの手の会社を目指す人たちによるものでしょう。この点に関しては、受ける会社によって使い分けろとしか言えません。ただ、逆に言えばPC専門というわけでもない職種(一般的な事務やPC入力系求人レベル。もちろん営業なども含む)では十分アピール材料にはなるのではないでしょうか。

 

MOSの実務での使い勝手や周囲の反応は?

ではいざ採用となって実務で使う段階ではどうかというと…
これは正直に書きますが、そのままどんな業務でもガンガンこなせる、というようにはなりません。
それはそうです。試験の内容が、そもそも機能の把握と操作方法だけなんですから。
第一、この手のソフトはできることが多すぎるため、試験ではフォローされていない機能や数式も少なくありません。
結果的に、その場の仕事内容に即した機能を、その都度ネットや参考書などで調べながら実行していくことになります。

ただ、一方で、基本機能の存在を知っているというだけでもかなり違うのは事実。
Excelなどは、そもそも機能の存在を知らないと手も足も出ませんが、逆に知ってさえいれば後は何とかなることがかなり多いためです。
MOSでは基本の機能についてはまんべんなく学べるため、知識の穴がないというのは大きい。
また、操作レベルで戸惑うことはかなり少なくなるので、業務に活かす際になじむのがかなり早くなります。

それに、初歩的資格の割には、意外と入社後の周りの反応も悪くない。
これは意外だったのですが、Office系ソフトは意外と系統だって機能を把握している人は多くありません。
もちろん入社した会社の傾向によって左右されますが、一般的な事務やデータ入力が主体の部署であれば、MOSを持っているというだけでも一応「詳しい人」と見てもらえることが多いのです。
もちろんそれ相応の努力は必要になりますが、うまく波に乗れれば、Officeソフト関係のご意見番として頼りにされる存在を目指すことも不可能ではありません。

 

 

実務経験なしでもいける?就職活動でMOSをうまくアピールするには

ここまででわかるように、MOSは面接での反応は決して悪い資格ではありません。
ただ、そうはいっても、実務経験が実際にある人に比べると、見劣りするのは事実です。

プライベートの使用経験でもある程度は補える

では、どうするか。
実務経験がない以上、それ以外で実際に使う機会を増やすしかありません。
具体的には、プライベートでひたすら使ってみるのです。
もちろん実務経験ほどのアピールにはなりませんが、PCソフトというのは「機能を使いこなせすればそれでOK」という側面が強いのも事実。
そのため、「日常的に使っています」と言い切れるかどうかだけでもかなり反応は変わってきます。

たとえば、Excelであれば、家計簿。
家計簿というのは何気に関数やグラフ機能などを組み込みやすいのがメリットです。
試験に出てきた関数や機能を片っ端から組み込んで、超高機能な家計簿を作ってみてはいかがでしょうか。
可能ならピボットテーブルやマクロなども使ってみると、よりアピールしやすくなるかと思います。

一方、Wordについては、正直Excelほど日常で使える用途の幅は広くありません。
強いて言えば、年賀状や暑中見舞いを宛名印刷まで含めて作成といったところでしょうか。
ただ、Wordの場合は手書き指定でない限りは職務経歴書などで使うこともできますから、それで十分かもしれません。

EXCEL優先、かつエキスパートまで取得しておく

わたしは一応WORDとEXCELを取りましたが、現場で使う頻度はEXCELが圧倒的に多いです。WORDは書類や手紙の作成、POWERPOINTはプレゼンと用途がはっきり限定されているのに対し、EXCELは内勤系作業に関して言えば、それこそどんな場面でも使われている印象です。

安い試験でもないのでまずはEXCELからとった方がいいかもしれません。
また、WORD、Excelに関しては、取るなら必ずエキスパートまでとっておいた方がいいです。
特にExcelは事務系での使用頻度が高いVlookup関数やピボットテーブルなどの機能を扱うのがエキスパートのみなので、ここまで取っておかないとアピール的にも実務的にもインパクトが薄くなってしまいます。

なお、Accessに関しては、応募条件に含まれる会社でのアピール度は高いでしょうが、そもそもAccess必須の求人自体がそこまで多くありません(特定業界は除く)。Excelほどの汎用性はないので、バッと求人をみて使用頻度の高い業界を目指すのでなければ、優先度は低めかと。

VBAで自動化プログラマーを目指すのも手

Excelに関して言えば、もし可能であれば別資格になりますがVBAエキスパートまで狙ってみるのもいいかもしれません。

こちらはExcelで用いられているプログラミング言語「VBA」の資格ですが、これは最近話題の「業務自動化」などにも使える資格です。プログラミング自体、言ってみれば旬のスキルですから、アピール度としてはより高くなるでしょう。
もちろん、MOSとは違ってお手軽な資格とは言い難いですが、プログラミング言語としては入門編に近い資格なため、一度挑戦してみると新たな可能性を見つけられるかもしれません。

ここまでくれば、「Excelできます」の言葉にも相当の説得力が生まれるはずです。

MOSの長所と欠点まとめ

最後に、以上で述べてきたことも踏まえて、MOSの長所と欠点をまとめておきます。

MOSのデメリット

・初歩の資格なので、PCの専門性の高い会社になればなるほどアピール度は低くなっていく
・あくまで機能に関する知識の詰め込みに近いため、そのままでは使えない。
実務では入った部署の内容に応じて、知識を実際に使える形に落とし込んでいく必要がある。
・受験代が高い(ひとつひとつの試験でいずれも10000円を超える)。

特に受験代に関しては、もともと高額なものが多い民間資格の中でも相当高い部類。Excel最優先で、とりあえず必要なモノだけ取っていくという形になるでしょう。

ただ、それを前提にしても、2013のエキスパートはいくらなんでもタチが悪すぎる。
わざわざ2種類に分けなければならないような理由があったとも思えませんし、金儲け目的と言われても仕方ないでしょう。

可能なら2010か2016で取った方が無難かもしれません。
Officeの場合最新バージョンならいいというものでもないのですが、操作方法こそ違えど、機能そのものには大きな差異はないのでアピール度としてはさほど変わらないはずです。

MOSのメリット

・PCを使う職種であればほぼ必須の技能であり、汎用性が高い
・普通にやっていたらぬけが多くなりがちな基本技能をまんべんなくフォローできる
・勉強期間が短くて済むうえ受験機会も多く、思い立ったら速攻で取得することも可能
・難易度が低い資格の割には、面接や実務での周りの反応はなかなか良好。
普通程度のPC知識の人が多い会社であれば「詳しい人」として見てもらいやすい

一言で言うと、MOSのメリットは「すぐ取れて汎用性も高い」ことにつきます。また、さらに言えばPC系には珍しく、長く通用するのもポイント。Web系の資格などは少し時間がたつとあっという間に陳腐化してしまうものも珍しくないですが、Officeはバージョンこそ違っても基本的な考えは変わらないため、長く通用します。

 

メリット・デメリットを分かった上で取得するなら使いやすい

筆者の実感としては、MOSは「使いやすい資格」という一言に尽きます。
弱点は確かにあるものの、それを理解したうえで取るのなら、決して悪い選択肢ではありません。

特に、すぐとれるというのは大きなメリットなので、履歴書の資格欄に書けるものがないというような場合には、強い味方になってくれるはずです。

 

また、基本機能をまんべんなくフォローしているというのも大きい。

officeソフトというのはPC業務においては基本ともいえるアプリケーションですが、それだけに穴が多いのが事実。意外に使いこなせていないことが往々にしてあります。

内勤系でかつPCを扱う職種ならまず間違いなく使うソフトではあるのですが、思った以上に知らない機能が多い。しかも、なまじ使えると思い込んでいるものだから軽視しがちです。

ただ、同じ職場でずっと続けるならそれでいいのですが、転職時はこの性質が仇になることが少なくありません。職場によって使う機能はかなり異なるためです。Excelでは特に顕著で、なまじ機能が広いために、「Excelを使える」と言っても、肝心の使う機能が部署レベルでもまるで異なっているということも珍しくありません。
こうなってしまうと、雇う側、雇われた側双方にとって辛い状況になってしまいがちです。

その点、MOSは学習できる範囲が基本的なこととはいえ広いため、こうしたリスクをギリギリまで減らすことができます。

特に事務系で長くやっていこうと考えているのなら、自分の知識や実力を確かめる意味でも、一度時間を取って取得してみるだけの価値はあります。確かに高くつく資格ではありますが、それだけの見返りは十分にあるのではないでしょうか。(K.Y)

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