ヴィジュアル系というカテゴリに対してよく言われることのひとつが、音楽的な意味での共通の定義が特にないことです。
そのために派手な外見くらいしか共通点がないようにも言われてしまいがちです。
個人的には音楽自体にも映像的な表現(絵が浮かぶ、浮かびやすい演出)を持ち込んでいるかどうかが、ヴィジュアル系となるかそうでないかの分岐点だと思っているのですが。
実際、その辺を相当追求した痕跡も見受けられるバンドも多いからこそ、カルチャーとして定着しているのではないかと思います。
ただ、特に初期のヴィジュアル系は、ただでさえネガティブな世界観に加え、大仰になりすぎてしまうなどにより、一般層が入りづらいジャンルだったのは間違いありません。
LUNA SEAのメジャー第一作である本作は、それをある意味打ち破った記念碑的な作品です。
映画的、という表現が近い出来で、この点ではかなりドラマチックな、ヴィジュアル系の王道とも言える仕上がりではありますが、それまでの同系統のバンドにありがちだった独特の濃さはかなり希薄。
世界観的には伝統のネガティブ性を引き継いでいるのですが、思った以上のポップさに加え、あまり悲壮感を出しすぎていないため、するりと入っていけます。
それでいて、偏執的なまでのアレンジでコーティングされた楽曲は、ほどよく壮大で、インパクト的にも十分。
つまり、過去のヴィジュアル系をより受け入れられやすい形で再構築した、いわばいいとこどりの作品と言えます。
さらに一曲ごとの独立性も高く、アルバム全体での押し出しが強い感のあったヴィジュアル系にしては珍しく、いろいろな場面をかき集めた短編作品の集合体という趣です。
そのあたりが、ひたすらトータル的な壮大さを演出し、突き進んだ先達、X-Japanとの違いとも言えます。
ファンタジックな感の強い場面がどんどん曲ごとにめまぐるしく切り替わっていく感覚で、ヴィジュアル系がはじめて卑近なエンタテインメントとして成立したという意味でも記念碑的な作品と言えるでしょう。
とはいえ、ルックス的にはまだ完全に「ヴィジュアル系の人」なのもポイントで、この辺の奇妙なバランス感覚も面白いところです。
特にボーカルのRyuichi(河村隆一)氏については、のちにソロをやるようになったあたりのルックスとのギャップが強烈。
その辺も含めて、ヴィジュアル系のひとつの歴史的ルーツを楽しんでみてはいかがでしょうか。