東日本大震災で被災していた三陸鉄道が、4月に全面復旧します。スケジュールは、4月5日に南リアス線の釜石-吉浜間が、6日に北リアス線の田野畑-小本間が復旧する予定となっています。被災以降、バスでの飛び石輸送を余儀なくされていただけに、全線開通は嬉しいニュースです。
一方で、JR東日本は、いまだ復旧が未定の山田線海岸区間について、三陸鉄道と地元自治体への譲渡を提案しており、三陸鉄道にとってはまだまだ激しい変化がありそうな気配です。この記事では、現在わかっている情報をまとめた上で、今後についての私見を述べてみたいと思います。
※(追記)その後、山田線海線区間は2019年3月に復旧し、同時に事前協議に乗っ取って三陸鉄道に移管されました。この時に、北リアス線・南リアス線とともに「リアス線」として一路線に統合され、現在は久慈~盛間直通の列車も、本数は限られるものの設定されています。本記事については、移譲が検討されていた時点での記録としてそのまま残しておきます。
譲渡提案の現状での内容詳細
JR東日本が譲渡を提案しているのは、震災以降不通となっている
山田線の海沿い区間、宮古~釜石間です。
JR東は1月に譲渡の意向を示していましたが、
昨日行われた沿線との会議で、改めて具体的な提案を行いました。
提案の内容は、
・被災した駅舎やレールを再建した上で、施設・土地全てを自治体に無償で譲渡
・運行は三陸鉄道へ譲渡
・JRはこの段階で同区間の経営から撤退。
・ただし、譲渡後10年間について、予想赤字計5億円を一括補填する
というものです。
言い方を変えるなら、1年あたり5000万の赤字がでることが予想される区間ということです。
JR東ワースト3位の営業成績
そもそも山田線とはどんな路線なのでしょうか。
山田線は、東北本線の盛岡から
太平洋岸の釜石までを結ぶローカル線です。
内陸の盛岡から海沿いの宮古に向かって山間を抜け、
宮古から釜石までは太平洋岸を走ります。
路線の形を大まかに見ると、
中間点の宮古で90度曲がる形になっており、
被災前の運行も宮古で完全に分断されていました。
譲渡案がわざわざ示されることからもわかるように、
経営としては完全に赤字線です。
JR東日本が現在運営する路線としては、
廃止が決定した岩泉線(4月1日廃止、ただし既に全線運休状態)と
只見線につづく、ワースト3位に位置しています。
特に盛岡~宮古間の山間部区間は、
本数が1日に数えるほどしかない閑散区間です。
ただ、それだけに鉄道ファンやローカル旅行が好きな層には
こよなく愛される路線ではあります。
譲渡後に予想されるメリットとデメリット
三陸鉄道は北リアス線、南リアス線に分かれていますが、
現在はこの間に山田線の海沿い区間が挟まっている状態です。
つまり、元々会社レベルで大きく路線が分断されていたわけです。
もっとも、震災前には直通列車もあったので、
一体感は意識されていたのでしょうが、それでも別会社ということで、
どうにもならない部分はあったと思われます。
今回譲渡が実現した場合、東北の太平洋岸、
盛~久慈までが一気に三陸鉄道による運行となります。
期待されるメリットは、一体運営化による運営改善でしょう。
ただ、一方で、三陸鉄道自体の経営状態が決してよくない上、
海沿いの区間は建設が古く、維持コストが大きいために
定期代などの値上がりは避けられないと思われます。
譲渡後についての私見
さて、もし譲渡がされたとして、三陸鉄道はどうなるのでしょうか。
以下はあくまで部外者目線の私見ですが、
山田線の震災前の状況から考えて、
JRがこのまま復旧して運営しても、
どうにもならなかっただろうな、とは思います。
むしろ、他のJR各社(や末期の国鉄)に見られる本数削減など、
年が過ぎるにつれてどんどん利便性が悪くなっていく可能性もあったのではないでしょうか。
そう考えると、三陸鉄道の一体化は、リスクは大きいものの、
見かたによっては悪くない案のように思うのです。
一体だからこそできる改善策もあるでしょうし。
ハッキリ言って賭けだとは思いますし、
地元の利用率の高さがあってこその話ではあります。
三陸鉄道や沿線には是非、
東北の太平洋岸といえば三鉄!
と言われるだけのブランドを作るつもりで
気合の改革を目指してほしいと思います。