小説(ホラー・サスペンス)

小説(ホラー・サスペンス)

行き過ぎた合理性が生み出す絶対的悪意『クビシメロマンチスト』

ライトノベルというカテゴリは世間的に認知されてからまだそれほど長い歴史をもつわけではないけれど、その中でも出世頭の筆頭のひとりと言えるのが西尾維新氏だろう。 どちらかというとレーベル的にはノベルズ系が多いものの、ご本人の軽快な作風はまさにラ...
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ヤンデレどころじゃない、真性の負の悟り 江波光則『ストレンジボイス』

世の中は不平等だ。一般的には否定されがちだけれど、それが事実だということは誰でも程度の差こそあれ感じているだろう。 わかりやすいところでは、たとえば産まれた家がたまたま金持ちかどうか。たったこれだけをとっても、人生は全く変わったものになって...
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こんな共同生活は嫌だ!『ミザリー』が描き出す妄執の空気感

同棲というと甘い響きだけれど、現実の恋愛的にはお試し期間という意味合いが強い。 相性の良しあしはもちろん、その相手の本性は実際に一緒に暮らしてみないとわからないという前提がそこにはある。 相手と二人きりの、世間の視線が届かない密閉された空間...
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度を越した大仰さが生み出す危ういストーリー『Yの悲劇』

作家にはそれぞれに特有のクセがある。個々の物語の流れとは別に、どうやっても設定や文章に滲み出してくる、固有のスタイルのようなものだ。 もちろん作風自体は広い作家も狭い作家もいるけれど、その幅に関わらず、このクセを完全に感じさせないということ...
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京極堂シリーズ屈指の陰惨さ『魍魎の匣』

ヒット作家でありながら、未見の読者に作品のジャンルを誤解されがちな作家というのは数多い。 京極夏彦氏はその最たる作家だろう。 代表作である『妖怪シリーズ』、通称京極堂シリーズは特にその傾向が強い。 タイトルや概要を見ただけでは、作品がどうい...
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夢野久作『ドグラ・マグラ』意識そのものへの恐怖を突く奇作

わたしたちはよく「自分が信じられない」といった言葉を使う。 とは言っても、ほとんどの場合、本当に信じられないというほどではない。 少し前の自分の行動への後悔だったりと、せいぜい自分の判断基準の不確かさを嘆く程度の意味あいに過ぎない。 だか...
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ゲーム小説にはあるまじき破滅性 手塚一郎『ワードナの逆襲』

テレビゲームのノベライズというと、いかにもなヒーローものという印象が強いし、事実その手の作品が多勢を占めるのだけれど、時々大きくタイプの異なる異色作が出てくる。 今回紹介する『ワードナの逆襲』は、まさにその典型と言える作品だ。 なにしろ、本...
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あんまりな陰鬱さ『悪魔が来りて笛を吹く』でココロが凍り付く

金田一耕助シリーズと言えばやはりそのおどろおどろしい雰囲気が思い浮かぶけれど、そんな中でも書き出しのインパクトの強さでいえば、トップクラスに来るのが『悪魔が来りて笛を吹く』だと思う。 なにしろ、冒頭から作者による地の文で「読む者の心を明るく...
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館モノの先駆け『そして誰もいなくなった』の余韻ある恐怖感

ホラーとサスペンス物は、目指すところこそ違えど、物語の基本となる流れそのものは兄弟かと思われるほどに似ている。 いずれのジャンルも、まず緊迫感を煽る舞台を用意しないと話が成り立たないという点で共通しているためだ。 煽るだけ煽ったうえで、どう...
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ikill~ターゲットの狭さが際立つドス黒パルプフィクション

渡辺浩弐氏という作家は芸風の幅も広いけれど、そこには通底するものがある。 既存概念も先進的な概念も含めて、どこか俯瞰的に見下ろす、冷静な視点だ。批評家的と言ってもいいそれは、かつて下ネタをネタに下品極まりないキャラづくりでコラムを書いていた...
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