藤子コンビの描く個性派サラリーマンヒーロー2選

藤子FやA氏は子供~少年向けの作品が有名なために、主人公に関してもその年代が据えられている作品がどうしても目立ちますが、その一方で、サラリーマンを主役に据えた作品も少なくありません。
未読の方でもなんとなく予想はつくでしょうが、2人の作風を見ればわかる通り、いずれの作品でもいわゆる「島耕作」的な出世組のサラリーマンはいません。
主役になるのはどいつもこいつもうだつの上がらなそうな、いかにも出世しそうにない奴らがほとんどです。特に短編では、うだつがあがらないどころか、あさっての方向に行ってしまうキャラも決して少なくありません。いずれにせよ、いわゆるヒーロー性とはかけ離れた存在です。

とはいえ、短編はまだしも、連載作品の場合は、そんなキャラだけで押すわけにもいきません。
連載作品となると、主人公にそれなりに共感できる方向性のクセがないと、なかなか続けられませんしね。

ここではそんな中から、一見さえないながらも実は…という個性派サラリーマンヒーローの作品をF氏・A氏ひとつずつ挙げてみたいと思います。
なお、A氏の「笑ウせえるすまん」については除外。共感云々以前に、あれはもうどうみても人外ですしね…

サラリーマンとスーパーマンの二足の草鞋『中年スーパーマン左江内氏』

F先生の作品でサラリーマンといえばこの人。名前からしてモロですが、何気に係長にはなってはいますが、ダークヒーロー的な要素の強いA氏のそれに比べると、言葉通りの善人です。

登場作品は「中年スーパーマン左江内氏」。
テレビドラマ化されたこともあるので、ご存知の方もいるでしょう。
作品としては、いわばパーマンの大人版といった内容ですが、一応ちゃんと「事件」と言っていいレベルのトラブルを解決していたパーマンと比較しても、遭遇するトラブルがみみっちくなっているのが特徴(笑)。
大人ならではのせちがらさが笑いどころとなっていて、むしろギャグ色は子供向けであるパーマンに比べても強くなっています。

掲載誌が「漫画アクション」ということもあって、内容的には不倫ネタなども含むので、ドラえもんのイメージで読むとびっくりするかもしれません。
とはいえ、題材はともかくとして内容は異色SF系と違って後味はよく、感覚的には少年向け作品とそう変わりません。
異色SFに入る前の慣らし運転にはもってこいかもしれません。

藤子A氏には珍しい、純然たる正統派ヒーロー『番外社員』

次にA先生ですが、世間ずれした印象の反面、A先生のサラリーマン系の主人公って、F先生以上に異色なのが多いんですよね。ダークヒーローものともいえる「喝揚丸ユスリ商会」なんかは、ブラックな作品としては面白いですが、正統派とは言い難いでしょう。第一、あれ、リーマンじゃなくて自営業者なんですしね、一応…

ということで、純然たる「ヒーロー」ということになると「番外社員」でしょうか。
これもトラブルバスターものですが、「左江内氏」とは違ってSF要素はなし。さらに内容的にもギャグ要素は薄いです。

見た目はいかにも鈍重そうなさえない親父ながら、実は凄腕のトラブルバスターである主人公・番外大吾郎が、会社トップ層の特命を受けてトラブルを解決していくというもの。
彼の凄腕っぷりが、一話完結で描かれます。

この設定からもわかるように、ストーリーラインについては純然たる「ヒーローもの」として仕上がっているのが特徴。
それでいて、多少企業ものならではのブラックさもかすかにまぶしたような絶妙なバランスです。
全話を通してひたすら痛快さを重視した娯楽作品として完成されています。
単行本でのカテゴリ上、ブラックユーモア系の一作として位置づけられてしまっていますが、その実むしろ本来の意味で「燃える」作品です。

むしろ、シニカルになりがちな大人向けの作品でここまでストレートな作品って、藤子氏に限らず珍しいかもしれません。割り切れない大人の世界を気持ちいいくらいにぶった切る爽快感を求めるなら、これに勝る作品は少ないはずです。

タイトルとURLをコピーしました