磐越西線の概要と車窓の見どころ 大河の透明感が目に優しい屈指の観光路線

太平洋側から日本海側に一気に抜けられる、貴重な路線の一つが磐越西線だ。
乗り鉄をやっているとかなりお世話になる機会は多いだろう。
会津鉄道や只見線との乗換線という面もあるからなおさらだ。

 

通勤列車から観光路線へ 多彩な変貌を見せる磐越西線

この磐越西線、「SL磐越ものがたり」などの臨時列車の影響から観光路線というイメージが強いけれど、普通列車に乗るとかなり印象が変わる。
はじめて磐越西線に乗ろうと郡山に出向いたときには、おそらく目が点になるはずだ。
ホームには、あふれる人の山。さすがに朝ラッシュ時の首都圏並みとまではいかないものの、多少余裕を見た程度では座れないことの方が多い。
沿線人口がそこそこあるので、列車の本数がそれに追いついていないのだろう。
こうしたアンバランスな光景は他のローカル線でも見られるけれど、この路線では特に顕著だ。

磐梯山丸かじり!会津若松までの車窓の方向は?

このように、郡山~会津若松間に関しては、磐越西線はほぼ完全に通勤・通学路線と言いきっていい。
ただ、例え座れなかったとしても、できるだけ窓側に立つことをお勧めしたい。
通勤路線の色合いが強い区間とはいえ、磐梯山の雄大な景観やかつてスイッチバック駅だった中山宿駅の旧ホームなど、見どころは多いからだ。
特に磐梯山に関しては、列車が進むにつれ様々な方向から繰り返し拝むことになるため、山の景観が好きならこれだけで満足感があるはず。

磐梯山は会津若松方面へ向かう場合で進行方向右側、中山宿駅旧ホームは左側となる。
時期と便によっては立ち位置の移動を躊躇するほど混む場合もあるため(連休や長期休みはその典型だ)、どちらを見たいか事前に決めておいた方がいいだろう。

なお、沿線名所としては他に猪苗代湖が有名だが、こちらは列車からはその景観を拝むことはほぼできない。
ちらりと見えるか見えないか程度である。

 

喜多方にむけて、じわじわ強まるローカル色

会津若松までの区間は、特に快速に乗れた場合は意外なほどはやく着く。
ローカル線特有のゆっくり具合を想像していると、拍子抜けするほどだ。

会津若松で終着の列車が多いため、ここで乗換になるケースが多いだろう。
ちなみに、磐越西線は会津若松駅で向きが逆となる(ホームも櫛形になっている)。

乗客数はかなり減るけれど、まだ電化区間ではあるし、喜多方という街も控えている。
車窓もよくある田園風景で、むしろ会津若松までの区間の方がよほど観光路線色が強いほどだ。
だから、この段階ではまだローカル線という感じはあまりしない。
ただ、車両についてはここから昔ながらの国鉄車両になることが多いだろう。

磐越西線が本格的にローカル線としての本領を発揮するのは、喜多方をでてからだ。

観光列車としての磐越西線の本領発揮 喜多方~津川間

喜多方から先、新潟側まで抜ける列車の本数は、少ない。
磐越西線は乗り合わせをあらかじめ調整していれば距離の割には意外と時間がかからない路線だが、逆にそれをしていなければ泣けるほどロスの多い路線でもある。
長距離路線では県境区間がネックになることが多いが、まさにその典型。
この区間こそが、磐越西線を使いづらいものにしている元凶と言ってもいいだろう。

ただ、その不便さに反比例して、景色の方は絶品。
さすがに「森と水とロマンの鉄道」などとキャッチコピーが付くだけのことはある。
喜多方を出てすぐに山中に分け入り、ひなびた山村を横目に見ながらやがて阿賀川に寄り添う車窓風景は、何度見ても飽きない魅力がある。透明感に満ちた大河の水面をみているだけで、心が文字通り洗われていくような感覚に陥る。

車窓の向きに関しては、個人的な好みでいえば、新潟県側に向かって左側がおすすめ。
何度か川のある方向が変わるため右側でも見れないことはないが、どちらかというと右側の車窓は山景色といった印象が強い。
左側の方が、川の雄大さを楽しめるタイミングが多く感じる。
特に県境付近などのまさに大河の流れ的な風情は、左側からしか見られない。
ただ、途中のダムなどは右側になるので、この辺りは好みで選んでほしい。

再び田園風景、そして町へ 津川~新津間

再び本数が比較的多くなる津川・三川両駅間で再び阿賀川の姿は、この路線の一つのハイライトだと思っている。
これを過ぎると、再びしばらくの田園風景を経た後、終点新津の通勤・通学圏に入る。
郡山エリアほどのラッシュは見られないが、時間帯によっては車内はかなりの活気を呈す。

 

ただの連絡路線として乗るのは勿体ない!

太平洋側と日本海側を結んでいる性質上、磐越西線は機能的な面が取りざたされがちだし、乗り鉄的にも気が付いたら乗っていたというケースも多いだろう。
特に乗り潰しを細かく分けて行っている場合は、新潟・福島両県に抜けるために何度も乗車することになる。

こういう乗り方だと、どうしても個人ごとに計画の癖が出るため、人によっては夜しかのったことがないという場合も出てくるかもしれない。
本数が少ないから、使い勝手を考えると便まで選んでいられないためだ。
けれど、たとえあなたが夜の乗車でも是とする乗り鉄だったとしても、この路線は是非昼間に乗車してほしい。
時間調整が難しいとはいえ、それだけの価値は十分にある。

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