かなり前になりますが、ファミリーマートが、抗議によってフォアグラ弁当の販売を中止したことが話題になりました。フォアグラは製造過程で強制的にえさを食べさせ、脂肪肝を起こさせるため、残酷と問題視されたのです。
倫理的な問題ゆえに非常に難しい面があると思うのですが、この問題はとりあえず置いておくとして、単純に食品として考えた場合、フォアグラという食材は実際どうなのでしょうか。
フォアグラの食材としての基本スペック
まずフォアグラとは、平たく言ってしまえば、太らせたアヒルやガチョウの、脂肪の多い肝臓です。
大きく分けて2種類に分類されており、ロワというのがガチョウ、カナールというのが鴨・アヒル。
どちらにせよ、言ってみればレバーの一種なわけですが、通常のレバーとは別格の濃厚な味が特徴です(それゆえ好き嫌いもハッキリ出る傾向にあります)。ロワの方が味わいが濃く、値段が高いのはこちらです。逆に、カナールは比較的安価ですが、ロワに比べてさっぱりしています。魅力のひとつであるくちどけもカナールの方がいいので、高級かどうかよりも好みの問題と言った方がいいでしょう。
利用法は幅広い食材ですが、多くの国では基本的に高級な珍味としての扱いです。ただし、最近は安価なものも出てきています。ちなみに産出量・消費量については、ともにフランスが世界最大であり、フォアグラと言えばフランス料理…的なイメージも、そう外れてはいないと言えるでしょう。
フォアグラの味を敢えて説明するとどんな感じ?
濃厚な味とは言ったものの、フォアグラのそれは言葉で説明するとなると非常に説明が難しいです。それに、好きな人だけを見ても、味については物言いや感じ方がバラバラなのです。ここまではっきり分かれるというのは、いわゆる三大珍味の中でも珍しいです。
それでも敢えて説明すると、味が似ているとしてよく引き合いに出されるのはレバーや日本の珍味であるあん肝。大ざっぱに言えば、これらと同系統のまったりとした味といえば、そう間違ってはいません。
ただ、実際に食べてみると、同系統というだけで明らかに別物。
まず、普通のレバーやアンキモとは濃厚さが全然違うものの、むしろクセは遥かに弱く、代わりににじみ出る肉の旨味がすさまじいです。口の中でトロっと溶けていくのも特徴ですが、その際に旨味が口いっぱいに広がり、余韻として残る。
このあたりはフォアグラ独自の感覚で、加えて生臭さも少なめなことが多いためかレバーが苦手でもフォアグラは大丈夫という方もいるくらいです。
ただし、猛烈に脂っこい。この脂こそがフォアグラの場合旨味の元で、個人的には食べている最中はそこまで気にならなかったりもするのですが、全体的にはしつこさを感じる人の方が多いでしょう。
フォアグラだけで食べられることが少ないのはこれが理由。逆に、こうすれば、他の食材にフォアグラの脂が絡んで強烈な旨味成分を移すことができますし、フォアグラ自体の濃厚さも中和できるので、お互いの食材を丁度いい塩梅で食すことができるというわけです。
なぜ大根が人気?フォアグラの付け合わせ
一緒に食べる食材は、肉・果物・野菜と様々。あまりガチガチに決まっているわけではなく、かなり個々人で好きなものと付け合わせている傾向です。ただ、定番をいくつか挙げるなら、肉関係だと牛フィレやステーキ、果物ならリンゴや柿、桃など。野菜だと大根、人参、キャベツ、玉ねぎなどです。
特に大根は、脂との相性が非常にいい上に、野菜自体の味的にもフォアグラとバランスがとりやすいため、日本では付け合わせとして高い人気があります。もともとは創作料理だったといいますが、現在では外食でフォアグラを頼むと、大根の上に乗って出てくることは珍しくなくなっています。
フォアグラのメニューや焼き方はどんな感じなのか
つくるメニューとしては、一番メジャーと思われるのがソテー。他に、前述のように他の食材とあわせて食べたり、パテとしてパンに塗るなどの形があります。とはいえ、シンプルに焼いただけで食べる方も多く、このあたりもお好みでということになります。なお、日本では最近の流行でご飯もの(フォアグラ丼)にしたりもしていますが、世界的に見れば結構珍しい食べ方と言えるかもしれません。
調味料についてもあまり定まったものはありませんが、バルサミコ酢を使ったソースなどはフォアグラに合うとして知られています。一方で、意外なのが醤油。好みにもよると思いますが、なかなかの評判なので、下手に凝ったものを使うよりもぴったりくるかもしれません。
細やかさが必要と言われるが…フォアグラの焼き加減
焼き加減は、両面がこんがり、カリカリとした感じになるまで焼くのがよいとされることが多いです。もちろん、中まできっちり熱が通っていることが前提なのは言うまでもありません。
ただ、フォアグラの場合、加熱時に脂がどんどん抜けてしまうため、その対策をどうするかで焼き方にはかなり差があります。
一般的には強火は良くないとされ、中火くらいで焼き加減を見ながら2~3分程度、やけたら裏返してもう一回…というやり方を取る方が中心。ただ、これについては異論もあり、強火にして、4,50秒程度の短時間で一気に焼いてしまった方がいいという意見もあります。
いずれにしてもかなり短時間での勝負になるため、冷蔵直後などの場合、焼いても中まで熱しきれないことも出てきます。そのため、焼く前にあらかじめ電子レンジで軽く加熱しておくやり方も取られています。ただし、これをやるなら、それこそ秒単位で開けしめしながらの確認が必要。感覚としては「とりあえず熱を伝えてやる」くらいでちょうどいいです。
また、それ以外に、一旦キャベツなどでくるむなど熱が間接的に伝わる状態にして、弱火である程度ゆっくり時間をかけて蒸し焼きにするというやり方もあります。このやり方なら、キャベツにフォアグラの旨味がモロにしみこみますし、せわしない調理が苦手なら一考の余地はあるでしょう。
いずれにしても、脂が抜けきらないうちに仕上げないといけないため、かなり細やかな調理が必要に必要になる…というのが定説です。
が、中には敢えて、これらを一切気にせず、とにかくこんがり焼ければいい、という風に割り切っている方もいます。脂にどの程度こだわるかという問題なので一概には言えませんが、気軽にやることを優先するなら、これくらいの気持ちでいた方がいいのかもしれません。
100gのカロリーは…フォアグラは栄養的にはいいのか?
さて、食品を語る場合、避けて通れないのが栄養面です。
この面でフォアグラがどうかというと、イメージ通り高栄養価の食品です。ビタミンB2、B12、葉酸などのビタミン類や、ミネラルの銅が豊富に含まれています。
一方で、当たり前ですが脂質が非常に多いのが特徴で、含有コレステロールなども高めです。
100gあたりのカロリーは510kcal、糖質1.5g。大方のイメージ通り、カロリーはいうまでもなく激烈に高いですが、糖質も肉にしてはかなり多いです。もちろん、糖質については主食系の米や麺類などと比べればはるかに少ないのですが。
なお、一人前の分量は一般的な量でだいたい50g。軽く食べる場合で30gといった感じで、カットされて売られている場合はだいたいこのどちらかの分量です。
お値段的にも健康目的で食べる食材じゃない
健康的にどう見るかですが、これは人や立場によって見解が全く異なるため、判断は難しいです。
健康的と考えられる要素としては、前述のとおりビタミン類・銅を多く含むこと、脂質の内、悪玉コレステロールを下げると言われる不飽和脂肪酸が多いことなどが挙げられます。
一方、不健康ではないかという要素は、高カロリー・高脂質であること。また、フォアグラ自体のコレステロールやプリン体の含有量がかなり多いので、これらの摂取を注意されているような方は、避けた方が無難でしょう。
管理人個人の私見としては、少なくとも、日常的に食べるようなものではない気がします(値段的にそもそも食べられませんが…)。その点では、最初から健康目的で食べるような食材ではないとも言えます。少なくとも、ダイエットには間違いなくよろしくなさそうですが…
とはいっても、ちょうどフォアグラが含む栄養素が必要な方もいるでしょうから、そこは個々の状況でご判断いただくしかありません。
フォアグラは元々ストレスをかけないのが伝統だった
最後に触れておくと、製造過程の残酷さがクローズアップされているフォアグラですが、この批判は主に近年主流になってきた、大量生産を意図した工場での製法に集中しています。
もともとの伝統的製法では、太らせるのは同様ですが、フォアグラの質を保つために極力ストレスを与えないことが重視されていました。そのため、育てる農場にも鳥たちの運動場が整備されていたといいます。
ヨーロッパでは伝統的な産地以外は生産が禁止されつつあるフォアグラですが、もし今後も息長く生産を続けるのであれば、製法面の原点回帰が必要かもしれません。
最近では、ロンドンやニューヨークのレストランのシェフが、ヴィーガン用フォアグラを作るなどの動きがあると言います。いわゆる代用食というやつですが、現状では、こういう品が出てくるのも自然な流れのようにも思えます。思想的な部分は別にしても、ここまで批判が高まってしまうと、提供する側も何かしらの対策を打たないと収拾がつかなくなっているのは明らかですし。
ただ。個人的な本音を言わせてもらえば、フォアグラ批判をどんどん突きつめていくと、実はフォアグラに限らず、安価な大量生産食品全てに当てはまってしまうのではないか?という気もします。