水戸の梅まつりだけじゃない!偕楽園の本当の楽しみ方

茨城県の梅の名所、偕楽園。春先に行われる水戸の梅まつりで知られる、日本有数の大庭園ですが、その設計思想には思わぬ意図が込められており、そうした意味でもかなり興味をそそられるスポットです。

今日は梅祭りのみどころに触れつつ、偕楽園を様々な面から紹介しつつ、そのバックグラウンドの楽しみについてつらつら書いていきたいと思います。

※以下、内容は執筆時点でのもの。また、梅祭りについては過去に開花時期による会期延長や、イベント変更などの措置が取られたこともあります。お出かけの際は、観光協会などに事前のご確認をとられることをお薦めします。

水戸梅まつりの見どごろ

まず梅まつりについてですが、イベントに関しては、主に各週末ごとに異なる行事が行われるのが特徴。近年は年ごとに行われるものがまちまちになっていますが、比較的定番扱いで催されているものとしては、雛流しなどの季節にちなんだものや、吟詠剣詩舞、着物で園内を回れる「観梅着物Day」などがあります。

また、特定の日のみになりますが「夜梅祭」と題された特別イベントも実施されています。こちらは国内でも珍しい夜間観梅イベントで、ある意味では梅まつりの目玉ともいえるものなので、どうせ行くならぜひとも目にしておきたいところです。

梅の花の見ごろを知っておこう

次に、主役である梅の花について。偕楽園は梅の種類が約100種と多く、それぞれに開花タイミングが異なります。そのため、梅まつりの時期であれば、訪れたタイミングにもよりますが、早咲きの梅、遅咲きの梅の双方が楽しめるのが魅力です。ちなみに、総本数は約3000本です。

梅の見ごろですが、偕楽園の場合は一応3月上旬あたりと言われることが多いです。ただし、梅の品種によってズレが生じるうえ、近年では寒暖差が大きくなっていることもあって、一年ごとにかなりのブレ(10日程度ズレるくらいは珍しくない)がでる傾向にあります。見ごろにこだわるなら、開花状況の速報に注意しつつ、調整が効くようにある程度幅をもってスケジュールを組んでおいた方がいいでしょう。

過去のケースから開花状況を追ってみると、たとえば2013年の場合、3月1日の段階で8パーセント強だったのが、その後暖かい日がつづいて12日には97パーセント、15日ですべての梅が開花したとのことです。ご参考までに。

日本三名園の一角・偕楽園の楽しみ方

会場となる偕楽園は、水戸藩藩主の徳川斉昭が作り上げたもので、名前には「民衆(=偕(みな))とともに楽しむ」という意味が
込められています。また、設計時のコンセプトとして「陰陽」が取り入れられています(後述)。

世界第二位の広域公園というスケール感

後楽園(岡山県)や兼六園(石川県)と並んで日本三名園のひとつとなっています。庭園自体の面積は後楽園や兼六園よりも小ぶりです。ただ、偕楽園の場合は隣接する千波湖(千波公園として整備されています)周辺まで含めてひとつの公園として運営されています。

そのため、全体をまとめて考えると、他の2庭園よりも広大な敷地を占有しています(広域公園としては世界第二位)。世界レベルというだけあって、そのスケール感は圧倒的で、試しに電車で沿線を走ってみると、車窓からだけでもその広大さを実感できるでしょう。

千波湖には水鳥や白鳥がやってくるほか、貸しボート、レンタサイクルや桜田門外の変の記念館など結構多彩な施設があるので、花以外でものんびりと楽しめる公園となっています。

場所に注意!偕楽園と対になる弘道館

また、それ以外の関連施設として、「弘道館」があります。これは江戸時代に当時日本一の規模を誇った藩校の跡で、建物や門などがそのまま残り、国の重要文化財・重要史跡に指定されています。本来学校だったわけですが、偕楽園とは当時から対になる施設として扱われており、梅の名所であることも同じ。現在でも、弘道館だけで甲州小梅や八重松島など、800本におよぶ梅を目の当たりにすることができます。

その関係上、梅まつりの際には偕楽園の本園とともに会場としての役割を担うこともあります。ただ、つい隣接しているように思ってしまいがちなのですが、弘道館は水戸駅の徒歩圏内にあり、偕楽園とはかなり離れています。イベントを回る際などにはスケジューリングに十分注意してください。

偕楽園は梅だけじゃない!他の季節の楽しみを知る

梅まつりが有名になり過ぎたこともあってか、偕楽園は一般的には梅の名所として定着していますが、実際には一年を通して様々な花が楽しめる庭園です。

4月の桜の時期には千波湖畔の約750本の桜がライトアップされますし、真っ赤に咲き誇ったツツジ数百本を眺めつつ茶会が楽しめる「つつじまつり」といった渋いものもあります。

9月以降だと、ライトアップされた萩を主役に、月見やお琴などこれぞ和風!と言った行事を揃えた「水戸の萩まつり」、そして晩秋には、拡張部のもみじ谷で真っ赤に染まった170本に及ぶ紅葉やカエデがライトアップされます。

シーズンはあるものの、それぞれの季節で行われる風流な行事は、日常のせせこましさを一旦忘れて頭をすっきりさせるにはピッタリです。偕楽園は立地的にはかなり街にほど近いですが、花々に囲まれているとそんなロケーションも忘れてしまうかもしれません。

これだけ手軽な立地条件でこれだけの気分転換になるスポットの存在は、かなり貴重なのではないでしょうか。

「陰陽」を味わうなら正門からが鉄則

さて、偕楽園で意外と知られていないのが、一般的に入場する人が多い東門や南門は、実は正門ではないということです。

正門は、JRの臨時駅(ちなみに下り列車しか止まらない)や駐車場とはまさに正反対の位置にあります。正門に行く場合は、水戸駅北口からバスで「好文亭表門」か「歴史館偕楽園入口」での下車となりますが、いずれも多少歩きます。

まず先にお断りしておくと、単純に梅だけをみるなら、東門や南門の方が手っ取り早いのは確かです。

ただ、庭園としての偕楽園の醍醐味を味わいたいなら、正門から入るべきだとされています。これは、前出のコンセプトである「陰陽」が、正門から順路に沿って歩くことではじめて味わえるようになっているためです。

「陰陽」によるビジュアルインパクト

陰陽とは、あらゆる物事を陰と陽の2つのカテゴリに分類する中国発祥の思想です。

この思想で特徴的なのは、陰と陽のいずれも不可欠とする点です。どちらがいい悪いではなく、お互いの存在と調和によってはじめて秩序が保たれるという、いわばバランスを重視する考えです。

偕楽園では、この思想を静謐な竹林と華やかな梅林の両者の絶妙なバランスという形で表現しています。

ルートとしては、正門→一の木戸→好文亭という順にたどります。すると、竹や杉主体のわびさび的な雰囲気の林(陰)から、急に視界が開けて華やかな梅林(陽の世界)に突入します。このコントラストは、ビジュアル的にも強烈なインパクトがあります。

はっきり言って正門は行きづらいですが、時間に余裕があるなら、徳川斉昭が偕楽園に込めた庭園としての真髄を、是非味わっていただきたいと思います。正直、庭園のバックグラウンドまで意識することなんて、よほどの庭園好きでない限りはほとんどないでしょう。ですが、偕楽園についてはその表出っぷりが非常に刺激的です。たとえ門外漢でも敢えて手間をかけるだけの価値はありますよ。

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