「餃子の満洲」をご存知でしょうか。主に東武東上線や西武線の沿線を中心に展開しているお手頃価格帯の中華料理店チェーンです。
店舗数は大手に比べると少ないものの、ローカルチェーンとしてはかなりの数です。ただ、いかんせん地域的にかなり絞り込まれた店舗展開だけに、正直かなりマイナーな存在。本拠地である埼玉県内ならまだしも、都内や近隣各県では存在さえ知らないという方も少なくありません。
が、この餃子の満洲、実はこの手のお店の中でもかなり特徴的な実力派なのです。今回は、ぜひ我が家の近所にも出店してほしいという願望を込めて、餃子の満洲の魅力を滔々と語ってみたいと思います。
チェーン系中華料理店では何気にレアな、パリパリの餃子
餃子の満洲で特に目立つのが、餃子の焼き具合です。しっかり身の詰まった餃子が、焦げ目がつくまでカッチリと焼き上げられて提供されます。以前何店かめぐってみたことがあるんですが、どこの店舗でもこの点は変わらなかったので、チェーン共通のレギュレーションなのでしょう。
この手のお店では、焦げ目をつけないように汁気の多い餃子が出されることも多いので、この時点で異彩を放っています。どちらがいいかは好みの問題ですが、多少焦げててもいいからパリッとした方が好きなら、非常に貴重な存在と言えるでしょう。
実際に口に運ぶと、まず見た目どおり、皮の外側については相当さっぱりした印象。見事についた焦げ目の香ばしさがこの段階で「俺は一味違うぜ!」と言わんばかりに自己主張してきます。焼き具合によっては多少の苦みを感じるものの、旨味や香りの前ではむしろいいスパイスになってくれます。
そして軽くかむと、餃子の醍醐味である、肉汁のあふれ出す感覚がじわぁ~と口いっぱいに広がります。この一口目の出来が計算されたものなのかどうかはわかりませんが、いずれにしても見事な出来です。最初のさっぱり加減との落差が絶妙。
これだけほめそやすと値が張るんじゃないかと思われがちなんですが、同ジャンルの大手チェーンとさほど変わりません。むしろメニューによっては安めだったりもします。ただ、大手だと大盛や小皿の無料券を導入していたりするので、そこまで加味するとトントンくらいかと。ただ、いずれにしてもリーズナブルなことには変わり有りません。
それでいて、この手のチェーン定番のW餃子定食なんかもしっかりラインアップされているため、かなりの大食いさんでも、量を気にすることなくかぶりつけるというのが素晴らしい。さっぱり、パリパリの餃子を思い切り食べたいというのなら、このメニューだけでファーストチョイスになりえます。
懐かしい素朴さと今風のこだわりのラーメンたち
次に、中華料理屋では欠かせない、ラーメンについてですが、総じて言えることは、非常に懐かしい味ということ。
特に、この店におけるスタンダードラーメンである「満洲ラーメン」は、まさに昔町の中華屋で食べたシンプルな醤油ラーメンそのものです。派手なメニューで押す店が多い中では一周回って珍しいレベルなので、ここまで徹底されると逆にインパクトがあります。ボリュームはあるのですが思いのほかつるっと食べれますし、「こういうラーメンもいいなあ」と、昔ながらのよさを再認識させてくれるはずです。
ちなみに、餃子の満洲は筆者の知る限り、店内も他のチェーンに比べるといかにも昔からやってる中華屋さんというイメージ。かなり懐かしい雰囲気なのですが、満洲ラーメンはこうした店のコンセプトをもっとも端的に表しているメニューと言えるでしょう。
また、他にもタンメンや味噌ラーメンなど、ひととおりメジャーどころのメニューは揃っていますが、路線の違いこそあれ、どこか素朴さを感じる味わいなのは共通しています。比較的時流の乗ったとおぼしき辛口ラーメン「旨辛菜麺」でさえ、この点だけは変わりません(さすがに他メニューに比べるとかなり濃厚ですが)。
ちなみに、懐かしいと連呼してきましたが、塩ラーメン系には沖縄のシママース、味噌ラーメンには赤みそなど、意外なところに今風のこだわりが見えるのがニクイ。あと、前述した「旨辛菜麺」については卵などの具がかなりボリューム感があり、食べたーって気になります。辛さについては人によって感じ方が違うでしょうが、少なくとも激辛系の店のような辛さではなく、常識の範囲内での「旨辛」なので、幅広い層に受け入れられる味だと思います。
ヘルシーさをどうみるか?こだわりのメインディッシュたち
ではそれ以外の、いわゆるメインディッシュ系おかずメニューはどうかというと、こちらはちょっと評価が別れるかもしれません。
というのは、全体的に中華にしてはかなりさっぱりした印象なのです。味付けはメニューによって控えめなもの、濃い目なものと様々ですし、当然油も使われているのですが、なぜか食べ終わるとさらっとした印象になる。中華料理というジャンルはそれ自体がまったり・濃厚なゴージャスさと後味を楽しむという側面も強いので、この点でちょっとイメージと違うと感じる方もいるかも。
ただ、餃子の満洲は方針としてヘルシーな中華を打ち出しているようで、だからこそこうした仕上がりなのでしょう。実際、さらっとした印象だからこそ、飽きない。
また、一品一品、実は相当手の込んだつくりをしています。こだわりは相当なもので、たとえばレバニラではレバーの味わいを活かすために、敢えて下味をつけないなど、なかなか独自性の高い作り方。この例に代表されるように、全体的にもとの素材感を押し出している印象があります。
この手の店の例に漏れずメニュー数は多く、定番のグランドメニュー以外に月ごとの限定メニューも登場します。何度か通って違うメニューを頼んでみれば、ひとつや二つは自分にとってドンピシャの、定番メニューが見つかるでしょう。私個人としては前述のレバニラがおすすめ。がっつり盛られてでてきて、満足感は見事です。
そして、何気にこの店で見逃せないのが、米がうまいこと。
炊き方の好みはあるでしょうが、筆者の場合メインディッシュ以上のスピードで米がなくなることも多いです。くれぐれも食べすぎ注意!
今時めずらしいまっとうさは企業としても貴重
ということで、我が自宅近くへの出店を祈って個人的願望をありったけ込めて褒めまくってみました。ただ、工場から50km以内の立地にしか出さないという方針を持っているそうなので、実際のところ難しいでしょうね…
ただ、近年は関西に工場を作って進出を果たしたりと、動き自体はローカルチェーンとしてはかなり活発な部類なので、ぜひ我が家の50km圏に工場ごとブッ立てて、盛大な進出を果たしてほしいところです。
ちなみにこの会社、敢えて商品改良費に予算を多めに配分するなど、何気に「職人気質の料理店」ともいうべき、恐ろしく地道な経営方針を取っています。ですが、考えてみればこれって、料理店に限らず、商売する上では本来珍しくもないというか、むしろごくまっとうなものなんですよね。
派手な展開や利益の高さばかりが評価されがちな昨今にこうしたお店が存在し、安定した支持を得ているという事実は、そのこと自体がとても意義があることのように思うのです。