春雨とビーフンは、ともにローカロリー食品と言われています。では、実際のところはどうなのでしょうか。ここでは、特にダイエット中の方は気になるであろう、両者のカロリーを調べていきます。
※原料や調理法など、両者の違いは前記事をどうぞ。
ビーフンはローカロリーではない?単純計算した場合の意外な事実
まず、単純にグラム当たりのカロリーを見てみます。
春雨が100g当たり340kcal前後、ビーフンが100g当たり380kcal前後。
※商品によって、製法などの違いから変わってくることには注意してください。
どちらかと言えばビーフンの方が多めですが、そう変わらない数値と言えます。
ただ、これはあくまでも戻す前の状態。戻した場合の100gあたりの数値は、春雨は種類にもよりますが、概ね80~84Kcal、ビーフンは129kcalになります。この辺、少しわかりづらいのですが「乾麺100gを戻した状態」ではなく「戻した状態で100gになるようにした場合」なので気を付けてください。
ラーメンやうどんと比較するとわかる、意外な結果
他の麺類との比較として、比較的低カロリーとして知られるうどんと、高カロリーのイメージが強いラーメン用の中華麺を比べてみると、以下のようになります。一応、カロリーと並んで気になる方も多いだろう糖質も一緒に載せます(中華麺については、単体の生めんをゆでたものを想定しています)。
カロリー(100gあたり) | 糖質(100gあたり) | |
春雨(普通春雨/戻した状態) | 80kcal | 19.1g |
春雨(緑豆春雨/戻した状態) | 84kcal | 19.1g |
うどん(ゆで状態) | 105kcal | 20.8g |
ビーフン(戻した状態) | 129kcal | 26.5g |
中華麺(ゆで状態) | 149kcal | 27.9g |
同じようにヘルシー食品と言われていても、かなり違うことに驚かされます。この数値を基準にすれば、春雨については、比較的カロリーの低い麺類として知られるうどんよりさらに低いので、たしかに麺類として考えればローカロリーと言ってよいでしょう。糖質もこの中では一番低く、単体の数値だけを考えれば優秀です。
一方で、ビーフンについては、少々疑問符が付きます。同じ100gあたりの中華麺と比較してみると、確かにビーフンの方がカロリーは低いですが、だからといってそこまで低いと言い切れる数値でもなく、何とも微妙。糖質についてはなおさらです。
もっとも、ラーメン用の麺と一言にいっても種類によってカロリー量には大幅に差があるので、単純な比較はできません。インスタントラーメンなどは一部の例外を除いてむしろカロリー高めですし、それ以前にゆでタイプの中華麺などはそもそも一人前で使う量自体が倍以上だったりしますから。
ただ、いずれにせよ、麺単体のグラムあたりのカロリーだけをみるなら、ビーフンはそう際立って低カロリーというわけでもなさそうです。何しろ、ラーメンと大して変わらないわけですからね。
ローカロリーなのは料理法や食事法次第
では、これだけカロリーに差がある春雨とビーフンがなぜ揃ってローカロリーと言われているのかというと、これは調理法によるところが大きいです。
春雨やビーフンは、一般的な使い方をする限り、一人前の量が結構少な目なのです。
例えば、焼きビーフンの1人前というと、ビーフンの使用量は大体50g前後です。また、春雨も添え物としての利用が多いですから当然使用量は少ないです。
ラーメンなどとはそもそも使う量が違うわけで、この量を前提とすれば、春雨はもちろん、ビーフンも確かにローカロリーであることに間違いはありません。
ただ、問題は、麺だけを単体で使う料理はないという事です。一緒に使う食材のカロリーも入ってきますし、麺自体の使用量も調理法によっては増減しますから、実際にはこの数字通りのカロリーという訳にはいきません。ビーフンはもちろんですが、春雨もこの点は同様です。
「ビーフンがノーカロリー」は印象論
まずビーフンについて言えば、前述した焼きビーフンでいうと、完成した一人前のカロリーは、一般的には430~440Kcal前後(量は具も含めて合計で250g前後を想定)くらい。こうなると、少なくともダイエット向きメニューとはとても言えません。
もちろん、メニューや使う材料、作る量次第でカロリー量は調節できます。ですが、そこまでいくと、「低カロリーな食材」という前提自体がおかしくなってきます。
そういう意味では、ビーフンがローカロリーというのは、印象論に過ぎないとも言えます。さすがにスープ込みのラーメンと比べればマシなことが多いので、その場合に限っては「相対的に低カロリー」という事になりますが。
ビーフンを食べるなら野菜をたっぷり使うのがおすすめ
このように、「ローカロリー食材」としてははなはだ心もとないビーフンですが、それでもあえて使うのなら、解決策としては野菜の量を増やすのが一番手っ取り早い方法でしょう。
もちろん、ビーフンそのものの量は増やさないことが前提。その分の物足りなさを野菜で量を増やして補うといった感覚です。
ボリュームが増えることでビーフンの量が少なくても思った以上に満足感が得られやすくなります。それに、カロリー以外の面を見ても、野菜は血糖値の上昇もある程度までなら抑制できるので、ビーフンの糖質が脂肪として吸収されることも抑えられます。
野菜自体の栄養価を考えると、バランスを取る上でも一石三鳥と言えるでしょう。
ローカロリーな春雨で陥りやすい罠
一方、春雨は先述の通り、確かに麺類にしてはローカロリーではあります。まして普段は副菜に使うことが多いわけで、自宅で量を調整しながら食べている限りにおいては、他の麺に比べればかなりカロリーを抑えることができるでしょう。
春雨を副菜として使う場合の落とし穴
ただ、春雨の一般的な使い方、つまり副菜として使うというのは、少なくともローカロリーという点では意味を成しません。
よくよく考えてみれば当たり前なのですが、「副菜」である以上、他にメイン、つまりご飯なりパンなりを食べるわけです。この場合、ご飯やパンのカロリーと、春雨のカロリーがまとめてかかってくるわけですから、カロリーという点だけをみるならむしろ逆効果になってしまうのです。
もちろん、春雨は腹持ちはいいので、それでお腹が膨らんだ分だけご飯の量を減らす、など、計算してやれればいいのですが、実際のところ、そこまで気を使う方は少ないでしょう。むしろ、おかずとしての意識がなまじ強いがゆえに、春雨のことはまったく意識しないままにご飯を普通に食べていた、というパターンがほとんどではないでしょうか。
主食としての春雨の致命的な弱点
では春雨をメインとして使う場合はどうか。この場合、確かに、家庭で量などをちゃんと管理しながらであれば、ローカロリーな食事を実現はできるでしょう。ただ、たまに食べるというならいいのですが、日常的な習慣として主食にしようとする場合には、大きな問題があります。
それは、飽きやすい傾向があるということ。
もちろん人によるでしょうが、春雨はご飯など一般的な主食に比べ、飽きがくるのが早いという意見が決して少なくありません。
一般に、主食にする食材は、かすかな甘みがあり、かつ淡泊さを兼ね備えたものが適しているとされます。米やパンなどを考えれば、まさにこれに当てはまるのがわかるでしょう。では、春雨はどうかというと…そう、まったく当てはまらないのです。
こうなると、結果的に満足できずにご飯を別に食べてしまったりして、かえって逆効果になります。要するに、食材の栄養素そのものよりも、食べる側の無理のない計画性と、それを継続する強靭な意思の方が重要になるケースがかなり多いということです。
春雨は主食としては決してメジャーとは言い難い食材ですが、それ相応の理由があるということですね。
外食で食べる場合の注意点
また、外食の場合はさらに話が違ってきます。
家で自分で作るのであれば、量や一緒に使う具材、調理法を自分でコントロールできます。ですが、外食の場合は完全に店にお任せ。大前提からして異なるわけです。
繰り返しになりますが、いかに麺自体がローカロリーであっても、使う量が増えればカロリー量はキッチリ比例して増えていきますし、調理法や他の具の影響は大きいです。その点で、外食は凝った料理が多い分、どうしても家でやるようにはいかない。
太平燕も作り方次第ではむしろハイカロリーに
たとえば、前の記事で触れた「太平燕」は、春雨を麺としてメインでつかう、日本では珍しい調理法の料理です。
春雨のカロリーが低めということもあり、低カロリーな料理かと思ってしまうのですが、これをメニューとして出している某店が以前公表したカロリー表では、なんと700kcalオーバー。ラーメンと大差ない、というか、ラーメンの種類によってはむしろこちらの方が高カロリーというとんでもない結果になっていました。
もっとも、一応フォローしておくと、太平燕は本来、作り方によってはかなり低カロリーに抑えることができる料理です。ですから、春雨自体というより具や調理法の影響の方が強いでしょうし、実際、店によってはかなり少ないカロリー値になっていることもあります。
ですが、だからといっていちいち一店舗ずつ、カロリーを確認していくというわけにもいきません。そもそも公表していない店も多いですし。
むしろ外食するなら最初からカロリーは忘れた方がいい
もちろん、これはビーフンでも同じ。同じ焼きビーフン1食分であっても、作り方次第ではとんでもないカロリー量になっている店もあります。
春雨と同じように、店舗による作り方の差でかなりの差があるのですが、カロリー高めの場合は700kcal後半。もちろん、それ相応に凝った作り方はしているので、それも当然ではあるのですが…
外食を利用するなら、むしろ最初からカロリーのことはきれいさっぱり忘れた方がいいのかもしれません。こだわろうとしても限界がありますし、第一外食の楽しみというのは、多くの方にとっては栄養価よりも、むしろ家では面倒くさくてできない、凝った作り方でしょうから。
どうせなら、素直に普段食べられない味を楽しんだ方が、はるかに有意義ではないでしょうか。
ローカロリーという言葉に踊らされ過ぎない
以上のように、春雨やビーフンは、理由に差はあれど、一般的なイメージを過信してローカロリーだ!と安心して食べまくるわけにもいかなそうな感じです。第一、炭水化物であることには変わりありませんから、カロリー以外にも、糖質もそれなり以上に含まれていることには留意が必要です。
流行りの主食置換えを試みる場合はもちろんとして、これらの数値管理にこだわるのであれば、量はもとより調理法や他の食材との兼ね合い、そして毎日の栄養バランスを十分計算してやる必要があります。
ただ、これは春雨・ビーフンに限らず、低カロリーと言われている(売りにしている)食品全てに言えることです。第一、そればかりを食べていれば、栄養面など別の部分で支障が出てきかねません。
確かに、カロリーという要素は、食事の際に気になるものです。ですが、それを気にするあまりドツボにハマってしまってはかえって逆効果です。今必要なのは、ローカロリーという言葉に踊らされすぎずに、上手な付き合い方を考える冷静な視点ではないでしょうか。