春雨とビーフン。
食感がかなり違うため、普段は全然違う食品として利用しますが、
たまに「どう違うんだろう?」と不思議に思ったりしませんか?
今日は、この「似たもの同士」の食材を
調理法などの面から比較してみることにします。
長くなってしまうので、カロリーについては次の記事で。
原料も食感も異なる、春雨とビーフン
まず、基本となる製法・食感の違いから。
春雨は緑豆やサツマイモ・ジャガイモといった
芋類のでんぷんが主原料です。
中国産は緑豆をつかったもの、
国産や韓国産は芋類を使ったものがそれぞれメジャーとなっています。
ツルツルした食感が特徴です。
これに対し、ビーフンは米を主原料としています。
最近では別のでんぷんをコストカットや品質改善のために
混ぜることも増えてきているようですが、
それでもメインが米なのは変わりません。
春雨と違って、ビーフンはパラっとしつつもボリューミーな食感です。
マロニーと春雨はどう違うのか
ちなみに、春雨を語る際によく引き合いに出されるのがマロニーです。こちらがどう違うかというと、実は根本的な部分ではほとんど同じです。
販売元であるマロニー社は別物として区別しているものの、そもそもの開発目的が「煮崩れしづらい春雨」。実際に栄養価や用途もほとんど変わりません。明確な違いは原料と製法で、ジャガイモ澱粉をベースにしつつ、トウモロコシ澱粉(コーンスターチ)が配合した上で独自製法で作られている、こと。逆に言えばそれくらいです。
ただ、いずれにせよ「煮崩れしづらい」というメリットは大きく、かなり幅広い用途に使える食材になっています。
春雨とビーフン、日本国内での使われ方
各国で様々な使われ方をする両者ですが、
日本ではどう使われるかを見ていきます。
まず春雨ですが、基本的に「麺」として認識されること自体
あまりありません。
基本的には中華サラダやなべ物・スープに入れるといった感じです。
春雨自体がメインと言うよりは、
料理に花を添える素材としての利用が一般的ですね。
一方で、ビーフンは日本では、
「焼きビーフン」として食べることが圧倒的に多いでしょう。
たまに春雨のようにスープに使う方もいますが、
あくまでこだわる人がやってみるという程度だと思います。
春雨を「麺」として使う例外
先に述べたように、春雨は国内に限っては、
あまり麺料理として使われることはありません。
ただ、例外的なものとして「太平燕」があります。
これは元々中国ではスープ料理だったのですが、
日本に入ってきてからは春雨を使った麺料理として
食べられています。
もともとは熊本の一部でしか食べられていませんでしたが、
最近はチェーン店などがメニューとして採用することも増え、一気に有名になりました。
春雨とビーフンはお互い代用できるのか
さて、見た目はともかく国内ではかなり違った使われ方をされている春雨とビーフンですが、どちらかを切らしているときなど、代用できないかな、と思ったことはないでしょうか。
結論から先に言うと、多くの料理で代用は可能です。国内で流通しているものに関しては春雨にしろビーフンにしても極細という点は共通していますし、メニューの区別はともかく根本的な調理法そのものは被る部分も多いですから。
ただし、前述の通り、そもそもの食感がかなり異なるため、そこを許容できるかどうかがポイントになるでしょう。
この辺りは好き嫌いの問題になってきてしまうので色々試してみるしかないのですが、ここではいくつか例を挙げて紹介していきます。
春雨を焼きビーフン風に仕立てる場合
春雨をビーフンの代用として使う場合、一番メジャーなのがこのパターンでしょう。前述の通り、国内でビーフンと言ったら焼きビーフンを思い浮かべる方が大半でしょうから。春雨はもともと炒めものに使うことも珍しくなく、比較的違和感はない部類に入る代用パターンと言っていいでしょう。
ただし、今回の場合はあくまで「焼きビーフン」を念頭に置いて作るのが前提。そのため、実際に作る際のコツなどは人それぞれでかなり差があります。
戻すべきか戻さないべきか
まず、戻すか戻さないかですが、これはきっぱり二分されています。一般的には戻す方がさらっと仕上がるので普通とされがちですが、例えば煮物などで春雨を使う際には、敢えて戻さないことで旨味を吸わせやすくなる、という面もあります。
この点から言えば、ビーフンの場合戻さないパターンの方がいいでしょうが、どこまで味を吸わせたいのかにもよるでしょうね。
どの種類の春雨を使うか
また、このパターンでもう一つ考慮すべきは、春雨の種類の違いです。先に述べたように、春雨には豆類のでんぷんを主とするものと芋類のでんぷんを主とするものがありますが、これらは料理に使う上で微妙に特徴が異なるのです。
一般に、炒め物に適すと言われるのは緑豆春雨です。これは熱に比較的強く、加熱しても崩れづらいため。その一方で、食感的に弾力が強いのも特徴です。
一方、芋類を主体とする春雨は熱に弱く、崩れやすいため、基本的にはガッツリ加熱するタイプの料理には用いられません。さっと戻してそのまま使える料理が主体なのです。ただ、味がしみこみやすいというのはビーフンの代用にする場合にはメリットになるでしょう。また、韓国産の春雨だと他の春雨にくらべかなりもちもち感があります。
工程のバランス次第でかなり近いテイストも可能
以上のような差があるため、ビーフンの代用として使う場合、いずれを使うかでかなり仕上がりは変わってくるでしょう。一般的には炒め物に向かないとされがちな芋系の春雨を敢えて使って、ビーフンの食感に近づける、というやり方もあります。もっとも、その場合は過熱は極力短時間で済ませた方がいいでしょうが…
戻すか戻さないや素材の選択もひっくるめて、この辺りは工程同士のバランスの問題になります。ただ、試行錯誤していけば、まったく同じといかないまでも、やり方次第でかなり近いテイストまではいけるでしょう。
ビーフンを春雨料理の代用品として活用する場合
では逆に、ビーフンを春雨の代用として使うパターンはどうでしょうか。
ビーフンの特性として、ボリューミーな食感があります。
どの料理の代用に使うにしても、春雨を使った場合に比べて、よくも悪くも重めの仕上がりになります。
この点は正直変えようがないため、春雨を焼きビーフン風にするのに比べると、素材の違いが目立ちやすいことは頭に入れておいた方がいいでしょう。
それを踏まえた上で、代表的な例を2つ挙げます。
ビーフンを麻婆春雨風に仕立てるなら最初から割り切るのが吉
まず、麻婆春雨の代用品にする場合ですが、ビーフンの戻しを硬ゆで程度にとどめる方法があります。確かにこうすれば、多少はボリューミー感が抑えられるかもしれません。
ただ、個人的にはこの場合は、最初から春雨のことは意識せず、別のボリューミーな料理と割り切って作ってもいいように思います。
そもそもビーフンと麻婆豆腐の組み合わせ自体、味の相性がいいですから。
春雨スープの代用品としては使えるか?
また、定番の春雨スープ風にする場合ですが、この場合、春雨どうこう以前に、ビーフンの煮崩れしやすいという特性がネックになります。
なにしろ作る際中はもちろんですが、作った後もあっという間にへたってしまいやすいです。
このため、極力短時間で作ったうえで、すぐに食べるというのを徹底することが前提です。
それができれば、味そのものは美味しくいただけるはずです。
なお、こちらもボリューム感は春雨を使った場合に比べ、かなりマシマシになりやすいです。
海外にも目を向けていろんな調理法を試してみよう
さて、違いや代用方法としてはそんな感じですが、
両者とも海外に目を向けると、結構意外な使われ方をされています。
例えば、春雨はその食感などから、フカヒレの代用として
スープに使われたりすることもありますし、
タイではおなじみのトムヤンクンに入れたりすることもあります。
フカヒレの代用というと、何となく高級な感じがしてきますよね。
またビーフンも、例えばベトナムでは、魚や豚肉、山菜を載せた上で
ヌクチャム(ベトナムではメジャーなたれ)和えにして食べるなど、
なかなかバリエーション豊かです。
身近な食材ではありますが、工夫のし甲斐のある素材です。
使い方によっては新鮮な料理が出来上がるので、
色々考えてみるのも楽しいと思いますよ。