日中線記念館(旧熱塩駅跡)といえば、廃線好きにとっては一種の聖地みたいな場所だ。というよりも、廃線好きに限定されない著名観光スポットとして、喜多方市内でも独自の位置を占めている。
が、この日中線記念館、アクセス面に関しては、致命的なまでによろしくない。
他の記事と内容がかぶる部分もあるが、ここでは敢えて1記事取って、日中線記念館へのアクセス方法を解説したいと思う。
日中線記念館への唯一の公共交通・デマンドタクシー
日中線代替バスの廃止と現在の交通状況
まず、他の記事とかぶるが、日中線廃止後の代替交通の推移について軽く触れておく。鉄道廃線後、熱塩駅周辺エリア(=熱塩温泉周辺)の公共交通は一旦会津バスが担うようになった。
が、この路線が2012年に廃止。その後は、広田タクシーが会津若松から米沢まで走らせていた「マスコットくん」が、この地域唯一のバスとなっていたが、こちらも2015年以降は廃止。ついに、熱塩エリアからは公共バスが消え去ってしまった。
現在も一部の旅行検索サイトではバス停が引っかかってくるが、基本これらはすべて過去のものと考えていい。
その代わりに登場したのが、喜多方市自らが運営するデマンドタクシーだ。便数は少ないが、こちらは現在も熱塩エリアをがっちりカバーし、地域唯一の公共交通機関となっている。
便利だが使える状況が限られる…喜多方市デマンドタクシーの難点
日中線記念館に公共交通機関を使っていくのであれば、
このデマンドタクシーが現在唯一の選択肢となる。

喜多方市デマンドタクシーみんべい号の雄姿
該当するのは「熱塩エリア」便で、最寄り停留所は「熱塩温泉郵便局前」。
往時の日中線とは違い、喜多方駅から市街地を経て熱塩エリアまで
一気に北上していくルートをとる。
値段も1回400円と安い上にどんどん飛ばすので、
乗れさえすればあっけないほど簡単についてしまうはずだ。
ただ、問題は乗るまでのハードルが高いことだ。
まず、前提として平日のみの運行(土日祝や年末年始休業)。
さらに前営業日の17時までに予約が必要なので、
ふらっといって気まぐれに乗るというわけにはいかない。
唯一の救いは、便数が少ないとは言え、
喜多方駅出発がだいたい朝から夕方までの2~3時間ごとにバランスよく散らしてあるため、
極端に待つということがないことくらいだ。
正直なところ、旅行者が使うにはかなりつらい仕様ではある。
ただ、うまい具合に平日に行ける機会があるなら、
このデマンドタクシーが一番便利だろう。
(帰りの便のことも考えておくのを忘れずに!)
「熱塩温泉郵便局前」バス停は県道333号(日中喜多方線)沿いで、すぐそばの旧駅前通りに入ればすぐに日中線記念館に着く位置関係だ。ただし、いわゆるバス停のような目印は一切立っていない。

熱塩温泉郵便局。筆者の時はこの駐車場にデマンドタクシーが駐車したが…
往路で使う分にはいいけれど、帰りにここで乗車する場合には直接車を見つけて乗り込むしかない。筆者が使った際にはワゴン車が郵便局の駐車場で待っていてくれたけれど、いつでもそうとは言い切れないので、待つときにはそれらしい車を見逃さないよう十分注意を払うことをお勧めする。
土日祝にしか訪問できない場合のアクセス手段
では、土日祝にしか行けない場合はどうするか。
考えられる方法は「普通のタクシー」「熱塩温泉周辺の旅館の送迎バス(当然宿泊が前提)」。
もしくは、自力で借りる「レンタカー」・「レンタルサイクル」だ。
送迎バスとタクシー・レンタカーについて
まず、免許を持っていて、かつ自分で運転する気があるなら、一番無難なのはレンタカーだ。
喜多方市は市街地や観光地がかなり場所的にバラけているが、
レンタカーなら日中線記念館は勿論、それ以外の場所も回ることができるので汎用性が高い。
喜多方駅周辺だとトヨタレンタカーが一軒ある。場所は駅を出て右手方向
(トヨタレンタカー喜多方店。バスロータリーまでいけば目に入るはず)。
ルートについては、県道333号に入ってあとは北上していけばいい(GoogleMAP)
一方、送迎バスは当然ながら、熱塩温泉で一泊する時のみとなるが、
この条件を満たせるなら話は早いし、運転の手間もいらない。
こちらも事前相談・要予約となるが、
「山形屋」「ホテルふじや」などが送迎を実施している。
はるばる出向くのだから、思い切ってそれくらいの贅沢はしてみてもいいかもしれない。
日帰りで、かつ運転するつもりもないのであれば、最後に残るのがタクシー。
ほんの15分、20分でつくし、予約も要らない。
手っ取り早さでいえば、これが一番だろう。
ただ、ネックはただの往復の割には値が張ること。
なにしろ、片道で4000円弱(ルート取りにもよるので、一応の値段だと思って欲しい)。
それも、ただ記念館と駅間を往復するだけでだ。
確かに手軽ではあるけれど、送迎バスやレンタカーとはまた違った意味で
ちょっとした覚悟が必要な選択肢と言える。
日中線記念館まで自転車で!長大サイクリングロードを駆ける
最後にレンタサイクル。
こちらは喜多方駅前では「民芸あくた川」、もしくは「佐藤貸自転車店」で
借りることが可能。
ただし、いずれも不定休なので、事前に営業日の確認をした方が無難だ。
レンタサイクルについては、ルートは熱塩までサイクリングロードが伸びている。
このサイクリングロード、「大川喜多方サイクリングロード」といい、
実は会津若松市から北上して熱塩まで伸びる長大さだ。
ルートについては、福島県作成のGoogleMapがあったので、そちらを参照してほしい。
ただし、喜多方から熱塩までだけでもそれなりの距離がある(サイクリングとして考えればそこそこだが)うえ、体験者によるとゆるやかではあるものの、熱塩に近づくになるにつれ上り坂になってくるという。
筆者自身は未体験なため詳しく解説することはできないが、
それなりに体力がないとおそらく辛いだろう。
廃線ファン感涙必至!日中線記念館について
ということで、日中線記念館へのアクセスについて述べてきたけれど、書けば書くほど「これはキツいなあ」という気にならざるを得ない(苦笑)。
ただ、着いてみれば、廃線ファンならそれまでの苦労が報われた気分になるはずだ。

旧熱塩駅前通り。ああ、ここまでが長かった…
日中線記念館の営業時間はかなりアバウト?

日中線記念館(旧熱塩駅)正面外観
営業時間や休館日は9:00~16:00、月曜と年末年始休館…ということに一応なってはいるようだ。
ただ、筆者が訪問した際には、思い切り休館日、かつ開館時間外だったにも関わらず、なぜか普通に開館していた(朝8時半ごろ)。季節的なものだったのかもしれないが、ある程度融通を効かせて運営されているのかもしれない。

日中線記念館(旧熱塩駅)の改札。この角度から見ると今にも列車がやってきそう。
もっとも、もし開館していなかったとしても、別に塀や門などで仕切られているわけではないから、その場合でも入れないのは駅舎の中だけ。
駅舎の外観やホーム、その他外に設置してあるものについては、営業していようがいまいが関係なく見物できるので、よほど駅舎の内部やサポなどの資料に興味があるのでなければ、そこまでこだわる必要はないかもしれない(もちろん、せっかく行く以上開いているに越したことはないけれど)。

日中線記念館内部
見れば見るほど廃線ファンにはたまらないアイテムの数々
駅舎をはじめとした施設の保存状態は良好で、ホーム、名物の転車台跡、レトロな客車など、廃線ファンとしては興味の尽きないアイテムが目白押しだ。

静態保存されている機関車の外観
後方の入口から客車の中に入ることができるようになっている。無骨かつクラシックな木製の背もたれをはじめ、さすが年代物!と喝采を叫びたくなるレトロな空間が広がっている。

客車内部。レトロすぎる…
ホームの保存状態も見事。小ぎれいになり過ぎず、かといって当然放置されているわけでもない、絶妙のバランスが保たれている。

見事なバランスの保存状態が美しい、熱塩駅ホーム
有名な転車台は、駅舎から少し離れた位置にある。多少歩くが、ほとんど遺跡のような風格を漂わせており、なかなか見ものだ。

現在の転車台。草の茂りっぷりが年月を感じさせる。
マイナーな路線にもかかわらず有名になるだけあって、ここまでレトロな駅舎と設備が粒ぞろいに揃っている施設は珍しい。タイムトリップしたような気分になるのは必至だ。
アクセスに苦労はするが日中線記念館にはそれだけの価値はある
いずれの交通手段を取るにしても、アクセス面の難関を乗り越えてたどり着く日中線記念館。
確かにアクセスは難しいけれど、特に鉄道好き・廃線好きにとってはその苦労に見合った価値のあるスポットなのは間違いない。
ぜひ一度は、なんとか予定を調整して訪れてみてほしい。幸い、喜多方市は街自体も喜多方ラーメンや蔵など見どころが多いし、会津若松も近いので、いっそ思い切って数日間取って日中線も含めた大旅行を敢行してみてもいいかもしれない。