北半球で一番寒いと言われる村を抱えていることで時折話題になるのが「サハ共和国」という国です。
どうしても寒さばかりがクローズアップされがちですが、意外なところで日本とのつながりの話も出てきていますし、寒い国ならではのカルチャーやスポットにも事欠きません。
今日はそんなサハ共和国についてまとめてみます。
サハ共和国はどういう「国」なのか
サハ共和国は、ロシアを構成する連邦構成主体の1つです。
要は一種の地方自治区なのですが、名前からもわかるとおりかなり高い自治を認められています。過去には国家主権宣言なども行っており、事実上連邦の中の主権国家という扱いです。
位置的にはロシア内の極東エリア。地図上で大まかに言えば、日本や中国東部からまっすぐ北になぞっていけばぶちあたる位置にあります。ロシア連邦内でも屈指の面積を誇り、北極海沿岸から内陸部までがエリアに当たります。
ダイヤモンドの名産地の一つとしても知られ、ロシア産ダイヤモンドのほぼすべてがサハ産となっています。
冬場気温は北半球最凶、だけど寿命は長め
テレビでも話題になっていましたが、サハ共和国の話をするときに絶対に出てくるのが気温の話です。
土地が広いため単純化するのは危険ですが、特に気候が激しいのが内陸部です。冬場は-50℃以下まで下がります。
有名なのがオイミャコン村で、ここは1926年に-71.2℃という最低気温を記録しています。
当然のように冬は長く、平均最低気温が0℃を上回るのは6~8月だけです。しかも、その期間でさえ、夜間は0℃を下回ることもあります。
一方で同じ時期でも寒暖差が異様に激しいのも特徴です。特に目を引くのが夏で、最高気温は30℃を超えることもあります。
そんな過酷な土地ですが、なぜか平均寿命は長めだそうです。明確な理由はここで断言することはできませんが、冬場のあまりの寒さでウイルスや細菌が生存できないそうなので、そのあたりは大きく関係しているかもしれません。
サハ共和国と日本の意外なつながり
そんなサハ共和国ですが、最近はプロジェクトレベルで日本との協力が始まっているという話も出てきています。北海道銀行が日本側の出資者となって、永久凍土の環境で温室栽培を行う研究などが計画されているとのこと。
もっとも、当事者のはずの北海道銀行が公式発表していないため、これが事実かはわかりません。ですが、北極以上の寒さの環境という特殊性を考えると、研究の余地は確かに大きそうです。
日本人がラーメン店をヤクーツクに出店
また、民間レベルの意外な関係として、ラーメン屋の出店があります。宮城県を本拠とするラーメンチェーン店、「麵屋正宗」がヤクーツクにお店を開業しているのです。
元々は2017年にウラジオストクで行われた、複数のラーメン店の試験的な出店が大成功したことが背景にあるようですが、試験出店の時にはリピーターまで出たと言いますから、ロシアの方の舌にラーメンは結構相性のいい味なのかもしれません。
麵屋正宗はもともとカンボジアやベトナムなど、アジア圏への出店には積極的なお店のようで、ロシアに関してもこれがはじめてのお店というわけではありませんが、サハ共和国に限って言えば初出店。それどころか、サハ共和国にとっては「日本人が経営する初の料理店」ということで非常に好意的に迎えられているようです。
なんにせよ、酷寒のサハ共和国で、現地の方が湯気を立てるラーメンをすすっている様子を思い浮かべるとほっこりします。こういう草の根レベルの交流が、意外と将来大きな関係に発展する源になるかもしれませんね。
酷寒の地ならでは!サハ共和国の観光名所
そんなサハ共和国ですが、観光という面ではどうかというと、地域特性を生かしたスポットなど、なかなか多彩です。ここでは、いくつか代表的なところを挙げていきます。
一見の価値あり!個性あふれるヤクーツク周辺の博物館・研究所たち
まず、首都ヤクーツクの周辺で、目立つのが独特の個性を持った博物館や研究所たちです。
有名どころだと、まずマンモス博物館。サハ共和国では永久凍土に冷凍保存される形でマンモスの骨格などが多数見つかっており、推定では牙だけでも数十万トンにおよぶ量が埋蔵されているのではないかと言われている土地です。
そうした土地柄を活かして、この博物館では発見されたマンモスの化石はもとより、体毛までが展示されるという徹底ぶり。考古学などに興味のある方にとっては、垂涎ものの施設となっています。
また、永久凍土というところで言えば、永久凍土王国というスポットも外せません。名前からしてなんだかすごそうですが、内部が永久凍土で覆われた洞窟をそのまま展示場として活用したという代物。雰囲気からして非常に珍しいですが、様々な氷像が絶妙にライティングされて次から次へと現れます。中には伝統衣装姿の人物像などもあり、その意匠の精密さには目を奪われること必至です。
また、かつて倉庫として使われていたという来歴から、運搬用のトロッコなども残っており、そのナチュラルっぷりも好感度大。ヤクーツクは街自体が永久凍土の上という環境にありますから、いかにも「ならでも」な施設と言えるでしょう。
ちなみに、永久凍土関係では、他に永久凍土研究所という施設もあります。こちらは完全に学問を目的とする施設ですが、ツアーに組み込まれていることもあります。
この他、サハ共和国の生産品である宝石や装飾品を主体とした博物館などがあります。いくつか興味のあるところを回るだけでも、サハ共和国という土地の魅力を色々な角度から知ることができるでしょう。
世界遺産のひとつ、レナ石柱自然公園
こちらは、位置としてはヤクーツクから180キロほどの位置にあります。ロシア極東地域でも有数の大河であるレナ川のほとりにある、自然形成された石柱群です。高さは最低でも150メートルという巨大なスケールで、現地のあまりの寒暖差から生まれた特異な美しさが特徴です。
世界遺産として登録されているだけあって、レナ川のクルージングの目玉として扱われていますので、比較的訪問のチャンスは多いスポットと言えるでしょう。
夏と冬、サハ共和国だからこその2つのお祭り
先に触れたように、サハ共和国でも指折りの寒さを誇るのがオイミャコンです。そこで毎年3月に開かれるのがこの「極寒祭り」。厳密には、トムトル村という村で開催されます。トナカイのレースなど、名前通り「極寒」の地だからこそできるイベントと言えるでしょう。
また、ヤクーツクでは、逆に6月下旬に、夏の訪れを祝う「イシアフ」という祭りがあります。
こちらは厳しい気候事情ゆえの民族文化といった趣が強く、民族衣装での踊りをはじめヤクート式相撲などが行われる他、シャーマンによる祈祷なども行われます。サハ共和国というとどうしても寒さばかりがクローズアップされる傾向にありますが、だからこそのお祭りと言えます。人々の夏への喜びと期待が表出する様を目にすることができるでしょう。
サハ共和国へはツアーで行くのもあり?
最後に、サハ共和国へのツアーは、ヤクーツクやオイミャコンを目的地としたものが頻繁とまでは言えないものの、たまに組まれているのをみかけます。金額は概ね高額ですが、何気にオーロラも見られる土地なので、興味のある方には貴重な機会かもしれません。
ただ、極度に寒がりの筆者からみると、相当身体に負担なのでは…と思えてしまうのですが(実際に行ったことがない立場での印象です。念のため)。
興味のある方は、旅行会社に寒さの程度や防寒対策などについて充分相談されたうえでのご判断をお薦めします。
オイミャコンへのツアーを主催している会社は?
2020年時点では、ロシア旅行専門の「ロシアエクスプレス」さんで、オイミャコンへのツアーが扱われています(ページ内「ツアーを探す」より「オイミャコン」と検索すると出てきます)。
ツアーの出発地はヤクーツクで、日程は7日間か8日間。日本からヤクーツクまでの空路はツアー外で料金も別になってしまいますが、案内はしてくれるようです。
内容は日程ごとに異なりますが、8日間の方は現地名物料理や前述した「極寒祭り」にも参加できるほか、道中ではヴェルホヤンスク山脈の景観を楽しめるなど、かなり盛りだくさんの内容。犬ぞり体験まで組み込まれているので、それこそ北極圏と聞いて思い浮かぶイメージそのままの体験ができるでしょう。
ただし、こちらのツアーでは防寒対策は各人にゆだねられているようなので、充分なリサーチと準備が必須でしょう。
いずれにせよ、日本では絶対に味わえない気候と文化を楽しめることは確かだと思います。