仕事が丁寧だけど遅い…事務系ヒラ社員のための厳選スピード改善術

仕事をするうえで、どうやっても避けられない大問題がスピードの問題です。

良し悪しは別として、今の世の中では、どうやっても質よりスピードが重視されるのが現実です。
質を重視するタイプにとっては「ホントにそれでいいのか?」という疑問が湧いてくるのですが、それが事実なら仕方がない。それに、そこそこ遅い程度ならともかく、納品期限をたびたび守れないところまでいくと、信頼も失ってしまいます。

そこで出番になるのがいわゆる「スピード仕事術」という奴なのですが、これ、立場によってはまったく使えないことも少なくない。

そんな中で本記事では、そんなスピード仕事術の中から、わたしの過去の経験上、それなりに使えたものだけを選び出してみました。
参考までに、わたしがこれまで就いてきた業務は「ルーチンワーク性が高いけれど、その代わりに精度が要求される事務系(役職なし)」が多いです。
記事もそうした職種を念頭に置いて書いていますが、スピード仕事術がそもそも使えないことが多い業種だけに、選んだ内容も比較的仕事内容を選ばずに使えるものになっていると思います。

 

巷のスピード仕事術は何故使いづらいのか?

権力や発言力ありきの仕事論はヒラ社員には使えない

まず本題について語る前に、なぜ巷のスピード仕事術が期待ほどに使えないのかを考えてみましょう。

これは、仕事術というジャンルの執筆陣の顔ぶれを見てみれば、おおよそ理由がわかります。
おおむね成功者…つまりどこぞの社長やCEO、あるいはそこまでいかなくても著名コンサルなど、それなり以上に権力や発言力、行動の自由を行使できる立場の方がほとんどなのです。

そのため、才能うんぬんは別にしても、普通の一般的な会社に勤めるヒラ社員には立場的に不可能なものが多々あります。

その典型例が「仕事は断れ」「うっとおしい奴は無視しろ」という奴。
もちろん、それができれば一番手っ取り早いでしょう。
ただ、これを一介の平社員、職場内でも役職が付いているわけでもない立場でやれるかというと…

職場の雰囲気や方針にもよるでしょうが、下手に理解のない職場で実行してしまうと、むしろ自分の立場が危うくなりかねません。
スピードアップどころの話ではなくなってしまうでしょう。

ルーチンワークでは使える仕事術は限られる

また、それ以外の内容についても、基本的に世のスピード仕事術というのはそもそもホワイトカラーの、それも企画やマーケティング系の、かなり頭脳労働性の高い職種に向けたものが半分くらいを占めている印象です。

これらの仕事にとってスピード術が有効な理由は、自分の頭の使い方次第でなんとかなる割合が他の職種よりも高い、つまり自己裁量次第という部分が多いからです。
言い方を変えれば、自己裁量だけではどうにもならない仕事になればなるほど、スピード仕事術は効果を発揮できなくなってくる。

特にこの傾向は、ルーチンワーク性が高くなればなるほど顕著になってくる傾向があります。
ルーチンワークというのは、たとえ作業そのものは個人でやるものであっても、進行そのものの管理権限は上が握っているため、自分だけでは改善の余地が少ないのです。

自己裁量の範囲内に絞れば、使える仕事術が見えてくる

ただ、以上のことは、スピード仕事術というものの多くには当てはまるものの、逆に言えば全部が全部そういう手法ばかりというわけではありません。
中には、例外も存在する。
最初から「自己裁量かつ、立場に左右されない内容」だけに絞って実行するつもりでかかれば、意外に有効な手法も数は少ないものの見つかります。

 

汎用性高め!事務系平社員のスピード改善術

ここからは、比較的間口が広いと思った手法を紹介していきます。

最低限の基本動作が身についているか?

まず、スピード以前の問題としてチェックするべきなのが、ある作業をこなすための基本の動作が、最低限つまづかずに実践できるレベルになっているかです。
データ入力であればタイピングなどがそれにあたりますが、ここが抜けていると仕事術うんぬん以前の問題になってしまいます。
この傾向は、単純作業であればあるほど強くなっていきます。

もしこの段階で躓いているなら、やるべきは一にも二にも練習です。
いわゆる「身体に覚え込ませる」段階と言えます。

もちろん、練習したからと言って、能力の生来の差というのはあります。
わたしは以前、一度職場でやたらスピードが速かった方からどういう仕事のやり方をしているのか教えてもらったことがありますが、判断から実際の物理的な作業に至るまで、速度が違い過ぎる。
もはや反射神経が遺伝子レベルで違うとしか思えないほどの差があります。
ハッキリ言って、ここは努力で埋められるようなレベルではありません。

が、彼らと同じようになるのは無理でも、マシになることはできます。
というか、もともと早い人を目指しても、気が遠くなるだけです。
とにかく、迷わず基本の動きができるようになることだけを考えましょう。

暗記次第で何とかなる部分はないか?

基本動作が最低限できているなら、次に考えるのは知識面です。

つまり、手順や判断基準が一通り頭に入っているかどうか。

マニュアルをその都度確認している状態では、そもそも遅くて当然です。
逆に言えば、マニュアルを完全に頭に叩き込んで、その通り自然にこなせるだけでも、速度は段違いに速くなります。

まず、仕事内容を見返して、知識レベルで躓いている箇所がないかを見直してみてください。
意外に、覚えさえすればなんとかなるという部分が少なくないことに気づくはずです。
この手のポイントは、見つけさえすれば、そのまま突破口になります。

なお、どうしても内容的にマニュアルを参照せざるを得ないなら、せめて一覧表のような形にまとめられないかを考えてみてください。
一目で見られるようにしておくのとページを繰って探すのでは、それだけで段違いの差が生まれます。

マルチタスクは害にしかならない!シングルタスクの徹底

複数の作業が立て続けにやってくる職場の場合、並行作業(マルチタスク)を推奨する仕事術が多いように思います。

が、これはよっぽどその手のことが得意でない限りはおすすめしません。
ほとんどの人は混乱してミスを増えますし、それでいて、ひとつひとつの作業への集中度も落ちるので、スピードそのものもさほど上がらないためです。

これを防ぐには、ひとつひとつ片付ける(シングルタスク)にするしかありません。

複数の仕事が来た段階で、必ず納期を確認して優先順位を決める。
その上で、ひとつひとつに集中して一気に片付けていくことです。
実際には手間なども考慮して順位を決めるのが理想ではあるのですが、慣れるまではまずは納期の順番だけでいいです。

ただし、単発作業でどう考えてもすぐ終わるようなものであれば、割り込ませても構いません。
ただ、それまでやっていた仕事と混同して能率や質が落ちないようなもの限定。
そうした不安が少しでも感じられるようなら、原則通り納期の順に片付けて言った方がいいでしょう。

効率をがた落ちさせる元凶、迷いをどう処理しているか?

ケースバイケースの対応が必要な内容で問題なのが、判断に迷うケースが多発することです。

この場合、理想は一つ一つその都度聞ける人に聞いて速攻で解決してしまうこと。
迷いながらの作業も、一種のマルチタスクに他なりません。
その時点で脳みその容量を消費しますから、結局スピードも精度も落ちるからです。

特に、仕事が遅い人の場合、迷いで手が止まってしまうことがほとんどですが、これ、一番時間の浪費の度合いが大きい最悪パターンです。
なにしろ、知っている人に一言聞けばすぐに解決する話なのですから。
心当たりがあるなら、これを徹底するだけでも相当効率が変わってくるはずです。

ただ、依頼者の不在などですぐに確認できない場合はどうするか。
この場合は、確認を後回しにするしかありませんが、せめてもの妥協策は打つべきです。
ただ頭の中だけで悩むのではなく、一旦メモするなどしてあとで見返せるようにしておくのです。

面倒くさいといえば面倒くさいのですが、これをやらないと、ひとつひとつの問題点を忘れないようにしないといけないため、なおさら頭がパンクしてしまうためです。

逆に、メモすることで忘れてもいつでも思い出せる状態さえ作れれば、頭の中をまだクリアな状態に保つことができるはず。
もちろん、メモと言っても自分が思い出せればいいので、走り書きで構いません。

「必要以上の」手間をかけていないか~仕事の最終地点を見極める

コンサル系の著者による仕事術で特に顕著なのが、「手を抜け!」という主張です。
確かに、仕事が遅い人はおおむね必要とされる以上の手間をかけているパターンがほとんどですから、この主張も間違っているわけではありません。

たとえば、典型的なのが確認を何度も何度も繰り返すパターン。
心配性な人だと特に顕著ですが、これをやっている限りはどうやっても速くはなれません。
よほど複雑な内容ならともかく、そうでないなら同じものを何度確認したところでさほど結果に違いは出ないからです。
最大限許容してもせいぜい二度見るまででしょう。

このパターンの人の場合、まずやるべきは、作業を始める前に「一発で終わらせるぞ!」と自分に言い聞かせるほかないです。
完全にクセになっていることがほとんどなので、最初にはっきり意識しないと変われないからです。
それでも、作業をやるうちに、元に戻ってしまうため、遅くなっていると思ったら何度も「速く!」と意識しなおす。

あとは、これの繰り返しです。
慣れてしまえば「一発で見ること」が自然になってきますので、そこまでの辛抱と言えます。

 

が、以上のような明らかにやりすぎな場合を除けば、「手を抜く」仕事術を鵜呑みにするのはおすすめできません。
仕事術の中には「どうせ後工程でチェックはしてくれるんだから、間違っていても気にせず流してしまえ!」というような極端なものもありますが、じゃあ自分がその後工程だったらどうしたらいいんだという話です。
こうした主張は、言ってみれば人任せな側面が強いので、仕事の内容次第ではかえってまずいことになりかねません。

ではどうするのかというと、自分が頼まれた仕事内容を精査して、「どこまでやるべきか」を最初に決めてしまうだけ。
要するに、「必要範囲内」であれば、手間はかけるべきだし、それを超えるような手間は掛けないということです。

たとえば、後で上司や同僚がしっかりクロスチェックしてくれるような内容であれば、自分のところで必要以上に止めるのはマイナスにしかなりません。
この場合は、必要以上に思い悩まずにスパッと早めに納品してしまうべきです。

逆に、自分自身の判断だけでの一発勝負、しかも失敗が許されないといった条件が重なっている場合などは、少し時間がかかっても精度を重視すべきでしょう。
客先への提案資料などは定番でしょうし、先ほどの例でいえば自分が最終工程にいるという場合も同様。
もちろん締め切りは絶対ですが、それさえ守ればある程度粘っても問題ありません。

 

結局、「どこまでやるべきか」はその仕事の内容によるのであって、一概に決めつけられるものではない。

ただ、仕事が遅い人の場合、この見極めが極めて下手なことも事実です。
適切な見極めができるようになるには、ひとつひとつの作業に関して「丁寧さ優先」なのか「スピード優先」なのかを分類するクセをつけるしかありません。

どちらにするかは「最終的にどういう状態になればいいのか」を把握しておけば、おのずと答えはでるはずです。もし自分で判断できなければ、(失礼にならない範囲で)最初に依頼者に希望を聞いてしまってもいい。
相手によってはウザがるかもしれませんが、後で文句を言われたり責任をひっかぶされるよりはまだマシなはずです。

そもそもスピードアップの気力を保てているか?

色々言ってみたところで、結局仕事が早くなる一番のポイントは、「仕事をスピードアップしないといけない」と常に意識し続ける以外にありません。
仕事を効率よくこなすということが自分の中で当たり前の習慣になるまで、これを続けるしかないわけです。

ただ、仕事が遅いと自覚がある人にとっては、スピードアップを意識し続けること、それ自体がかなりの負荷を伴うものです。
そもそも仕事の土台が変わってしまいますから、慣れるまでは相当消耗が激しいはずです。

そんな中で、ある意味基本の知識など以上に重要になってくるのが、体調の問題です。
特に、睡眠。

当たり前ですが、睡眠不足状態で仕事の速度を上げようというのは、ほぼ不可能です。
スピードアップを意識し続けようにも、ダルくてそれどころではありませんし、たとえ気合を入れてもすぐ萎えてしまいます。

特に、効率性を長時間安定して保つためには集中力を保つ必要があります。
これについては様々な脳トレやサブリミナル音源なども出ていますが、どこまで効果が出るかは未知数。
それよりもさっさと床に入って十分に眠る方がよっぽど即効性がありますし、効果も高いです。

まずは「はやく動こう」と思えるだけの気力を溜めること。
もしそれがおっくうなら、色々なテクニックを探すよりも、生活習慣を立て直すことを優先すべきです。
なんだかんだ言って、一般的な生活リズムというのは、それだけの意味があるからこそ一般的たりえていることを忘れずに。

スピードアップの意識はそれ自体が超汎用スキルだ

さっくりと汎用性の高いと思われるスピード仕事術を紹介してきました。
本文では触れませんでしたが、他にも使える方法はあります。

たとえば、ExcelのマクロやVBA。事務系や管理系などの内勤では、これが使えるなら最強でしょう。なにしろ、PCが作業を全て代行してくれるわけで、いかに自分がトロかろうが関係なくなるわけですから。
覚えるのに手間はかかりますが、どうしてもというときには勉強時間を割くだけの価値はあります。

 

もっとも、ここまでいろいろ語ってきましたが、本来であれば、適材適所で能力を活かせる職場なら、それがベストだという思いはあります。

やる作業の量や内容が変わらない中でスピードだけを上げると、どうやっても精度は犠牲になります。確かに質と速さを両立できる人もいますが、わたしが出会ってきた同僚のことを考えても、そんなのはごく一部。

そんな中でうまく回っていた職場というのは、大体が適材適所がうまくハマっていました。
結局、速い人にはスピード重視の作業を、正確性の高い人には精度重視の仕事を任せるのが一番ですし、実際、そのバランスが崩れた瞬間に部署が崩壊していったケースは嫌になるくらい見てきました。

 

とはいえ、残念ながら、そうした部分は一介のヒラの立場でどうにかなるものではありません。
それなら、せめて自分にできる範囲で、バランスを取っていくしかありませんし、またそれが自分の身を守ることにもつながります。
今はもちろん、将来にわたっても。
「スピードアップを常に意識できる」ことは、それ自体が今の世の中では、きわめて汎用性が高いスキルなのですから。

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