悪魔城ドラキュラシリーズというと、
ファミコン初期からコナミの看板の一つを長らく張っているタイトルです。
このシリーズ、近年の作品だと探索型のイメージが強いですが、
初期からのファンの方にはステージクリア型アクションとしての
印象の方が強いと思います。
というのも、1作目はもとより、その後しばらく続いたシリーズ作の中で、
名作とされる作品はだいたいステージクリア型だったためです。
ステージクリア型以外のものも数は少ないながらあるのですが、
これがいまいち評判がよろしくない。
そのケチをつけた代表的な作品が、
初期も初期、2作目にあたる『ドラキュラⅡ 呪いの封印』です。
『ドラキュラⅡ 呪いの封印』のゲームシステムと概要
『ドラキュラⅡ 呪いの封印』はシステム的には
各地を巡り歩いて謎を解いていくタイプの探索型アクションです。
RPGの要素が濃厚に取り入れられているのが特徴で、
主人公シモン自身のレベルアップをはじめ、
武器である鞭も複数種類が用意されています。
時系列的には1作目の純粋な続編。
前作でドラキュラを倒しはしたものの
自身も身体に呪いを受け、余命いくばくもない状況に陥ったシモンが、
その呪いを解くとともにドラキュラを永遠に封じることを決意する、というストーリーです。
封印の手立ては、5つに引き裂かれたドラキュラの死体を一つ一つ集め、
全てのはじまりであるドラキュラ城で焼き払うこと―――。
マップは
・情報を集めたり買い物をしたりできる「街」
・ドラキュラの遺骸が安置されている各地の「館」
・それらをつなぐフィールド
からなっています。
これらを行き来しながら徐々に強くなるとともに、
得た情報でフィールドの謎を解いていくというのがゲームの大まかな流れです。
『ドラキュラⅡ 呪いの封印』は何故評価されなかったのか
クソゲーではないが、当時からイマイチ冴えない評価
ケチをつけたとは書いたものの、
この『ドラキュラⅡ 呪いの封印』は、
その後の作品でも定番となった名作BGM「血の涙(Bloody Tears)」が初めて使われるなど
注目点も多く、一概に否定される作品では決してありません。
当時のゲーム専門誌のレビューも、高評価とまでは言い難いものの
それほど低い点数でもなく、いわゆるクソゲーとは明らかに異なります。
ただ、そうはいっても、シリーズの平均的な評価を考えるとかなり冴えないのも事実。その要因は、個々の要素の完成度の低さでしょう。
まず、シリーズの特徴であるアクション性が、やはりステージクリア型の作品に比べるとしょぼい。
十分遊べるには遊べるのですが、
なまじRPG的な育てやすさを考慮したせいか、
ステージクリア型のような歯ごたえは乏しいです。
また、同じ場所を何度も往復することもあって、
最初はいいのですが徐々にダレてくるのは否めません。
では探索型・RPGとして見るとどうかというと、
むしろ余計に不出来な点が際立ってしまうのです。
単調さと理不尽な探索のダブルパンチが致命的
まず、「探索」という意味でいうと、
一番の問題は単調さ。
なにしろ、各地の移動マップはもちろん、
ドラキュラの遺体のパーツが安置されている「館」にしても、
凝ったギミックはほぼ皆無なのです。
それでいて、すり抜けられる壁などが多数あり、
しかもノーヒントなため、
探索と言っても
「どこかにあるはずの(一見見分けがつかない)壁をただただ総当たりしていく」
というのが館のプレイ時間の大半を占めることになります。
また、それ以上に問題なのが、街で得られる情報の多くを「嘘」が占めること。
しかも、本作のセリフは嘘のつき方が非常に巧みで、
あからさまにわかる嘘があまり多くないのです。
これは、嘘情報の頻度・程度などのさじ程度によっては美点にもなりえる特徴ですが、
本作に関して言えばその両方が少々限度を超えています。
結果的に、ユーザーをイライラさせる要因にしかなっていません。
特にとどめになるのが、ある場所で起こす「風」。
これに乗って別の場所へ運ばれなければゲームが進行しなくなる
極めて重要なイベントなのですが、
このためには
・ある特定の場所で、
・あるアイテムを使用した状態で、
・特定の操作を行う
必要があります。
これについては、さすがにノーヒントではありません。
確かに正解の情報はあります(これにさえ嘘情報もあるのが紛らわしいですが)。
ただ、場所とアイテムについては具体的に説明してくれるものの、
操作に関しては表現が極めて抽象的(というか、もって回った言い方)なため、
「場所とアイテムは合ってるはずなのに…いつもの嘘情報か?」と思い込んで
余計にドツボにハマる方が大半でしょう。
上記は極端な例ですが、
基本、全編にわたってこの調子なため、
ユーザーは正解かさえわからないまま
ただでさえ単調なフィールドをうろうろすることを強いられます。
それで進めなくなって投げる…というのが、
本作のユーザーの典型的なパターンです。
『ドラキュラⅡ』にあって他のシリーズ作にない美点
主人公自身の切迫感はシリーズ作隋一
ただ、そうした欠点は別として、
本作はホラーとしての雰囲気作りという点では他のシリーズ作以上に良く出来ています。
まず、何と言っても主人公シモンの目的が、
自分にかけられた呪いを解くことなのが大きい。
他のシリーズ作は、ドラキュラをはじめとするホラー由来の怪物たちこそ出てくるものの、
主人公はあくまでも自分の意思で彼らを狩るわけで、
言ってみればホラーというよりも英雄譚です。
その点、本作は、ドラキュラを最終的に封印するという大義名分はあるものの、
根本的には「自分の命が危機にさらされているから」というのが第一です。
それだけに、切迫感が他作とは一線を画します。
ホラーにもいろいろジャンルはあるとはいえ、
基本、怖さというのは自分から飛び込んだ場合には希薄になります。
自分が意図せず巻き込まれたからこその恐ろしさが、
やはりホラーというジャンルの根本でしょう。
その点では、本作はドラキュラシリーズには珍しく、
バックグラウンドの段階からホラーであることを強調した作品なのです。
ホラーであることに徹した寒々しい演出
また、それを支えるグラフィックなどの演出にしても、
終始一貫してどこか寒々しさ、重苦しさをたたえています。
その分盛り上がりなどとは無縁なのですが、
ホラーであることを重視するならむしろ正解でしょう。
特に、街の雰囲気の出し方は巧み。
最初の街からして住人たちのセリフはどこか空虚さを漂わせていますが、
これが終盤の街に近づくにつれ、どんどん濃厚になっていく上、
街自体の活気もなくなっていきます。
特にドラキュラ城至近にある最後の街は、
まさに死の街というのがぴったりくる寂れっぷり。
プレイすればするほどどんどんドンヨリ感が強まってくる感覚は、
まさにホラーゲームのそれです。
もちろん基本がアクションなので
アドベンチャーゲームのような直接的な演出はできませんが、
その範囲内でできうる限りのホラー的演出の手が尽くされています。
今的に言うなら「雰囲気ゲー」 短所も踏まえた購入判断を
以上の長所と短所を踏まえて考えると、
『ドラキュラⅡ』は、今風に言うなら「雰囲気ゲー」に近いかもしれません。
ゲームそのものの質には不満が残るものの、
雰囲気そのものを楽しむという点においてだけはシリーズでも屈指です。
なお、今から楽しむ場合は、
Ninendo3DSとWiiU対象のダウンロードサービス、
バーチャルコンソールでの配信を利用するのが一番手っ取り早いでしょう。
前述の通り謎解きの理不尽さがかなり際立っているため、自力攻略にこだわりがある方にはあまりお勧めできません。
むしろ最初から、進行に詰まったら各種攻略情報に頼る、といった感じで割り切ってかかった方がいいでしょう。そういったプレイスタイルならストレスもたまりづらいですし、雰囲気にも浸りやすいと思います。