ある意味最強のローカル線・三江線をほめたたえてみる

島根の江津から中国山地の奥、三次市を結ぶ三江線。
この路線ほど、廃止がささやかれつつもしぶとく生き残っている路線も少ないかもしれません。

追記:2018年3月末日をもって三江線は廃止されました。現在は代替バス複数路線・および補完としてのデマンドタクシーによるアクセスのみとなります。本記事は三江線存続当時に書いたものです。お読みになる場合、運行当時の記録としてお読みください。

 

考えうる限り最悪の運営条件…ローカル線の極致・三江線

現状残っているJRの路線中最少の乗車人数、必要以上に大回りなルート、限界まで設備を減らされた結果、これ以上の増発が不可能なダイヤ。途中に都市と呼べる規模の町は皆無な上、両端の江津と三次でさえ、地方の中小都市レベル。

これらの要素は一つ一つはローカル線にはさほど珍しい話ではありません。実際、全国のローカル線には三江線ほどではないにせよ似た要素を抱え、廃止の危機に瀕する路線も多くあります。ですが、その中でも三江線の悪条件の揃いっぷりは際立っています。そもそも全通した(そして日本がまだ高度成長期のさなかだった)70年代でさえ、既に「赤字は確実」と言い切られていた路線なのですから。

そうした逆境にもかかわらず、三江線は(たびたび水害を受けたにも関わらず)未だ存続され、気がつけば鉄道ファンにとっては垂涎の路線となっているのですから、不思議なものです。

かく言う私自身、その魅力にやられた口なのですが。はじめて乗ったのは確か2010年でしたが、以降毎年のように、それこそまるで恒例行事のように乗りにいくようになりました。アニメファンの方は作品中の名所を聖地と称して巡礼をするそうですが、わたしにとっての三江線はそれに近い存在といえます。

意外に説明に困る、三江線の魅力

では三江線の魅力とは何かということになるのですが、正直説明が難しいのです。

派手な観光地があるわけでもなく、ルート的にも他のローカル線、たとえば九州の肥薩線における山越えのような派手な特徴を持つわけでもなし。高架橋の途中に設けられた「天空の駅」宇津井駅などの話題性のある駅も存在するとはいえ、路線全体からしたらあくまで部分的な話題に過ぎません。

しかも、ひたすら田舎風景が続く車窓風景は、バリエーション的にも他の観光的な要素の強い路線とはかけ離れたもの。要するに、いわゆる「目立つ路線」ではあり得ないわけです。

見事なまでの目立たなさっぷりゆえのヒーリング路線

にも関わらず何故ひかれるのかというと、まさにこの目立たなさ、さりげなさゆえの田舎ムードゆえです。
何かを主張するわけでもない、本当に純朴な田舎の風景は、しゃれた志向が凝らされることも多い昨今の風潮の中ではなかなかお目にかかれないものです(萌え系マスコットキャラはいますが、決して派手には使われていません)。

また、全線を通して並行する河川「江の川」の雄大さもなかなかオツ。海沿いの路線、あるいは急流を望む路線のような派手さはないものの、時間を忘れたかのように流れる大河の姿は、沿線のムードと相まって、半端じゃなくリラックスさせてくれます。個人的な意見を述べさせてもらえば、数あるローカル線の中でもヒーリング効果はトップクラスかもしれません。

 

乗車難易度は高いがのんびり度は屈指

ダイヤ的にはローカル線の中でも相当本数がすくない部類で、全線の乗り通しは少々難しいです。始発で一気に走破したい場合には、江津か三次での宿泊を考えましょう。

一方で、この沿線の雰囲気にどっぷり浸りたいなら、途中駅の旅館にとまるのもありです。
いずれにしても軒数は多いとは言えないため、事前の予約はお忘れなく。
ノンビリすることを目的とするなら、本路線とその沿線の車窓の効果は間違いなく屈指です。

実を言うと、わたしがはじめてこの路線に乗ったときというのは、その当時の仕事が完全にどん詰まりだった時期で、ストレスが最高潮だったときです。それが、ひと時とはいえ、見事なまでにほぐれた。わたしにとって三江線が欠かせない存在になったのには、そんな理由もあります。もちろん誰にでも同じ効果があるとは言いませんが、ほっとしたい時、一度は選択肢として、乗車を検討してみてもいいのではないでしょうか。

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